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メールマガジン Vol.079

※HTML版はこちらをご覧ください。
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 春秋社 メールマガジン【Vol.079】
   2025年 10月 3日配信
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巻頭言!

あなたは死後の世界を信じますか? 輪廻や来世を信じますか? 

私の祖母は、死後の世界の存在を確信していました。祖母の知り合いが亡くなったとき、死後の世界をたいへんリアルな夢で見せてくれて、あの世の名簿に自分の名前――といっても何か花の名前だそうですが――を書きこんだので、死んだら天国か極楽まちがいなし、と自慢げに語っていたものです。

その祖母も亡くなって四半世紀。夢であの世を見せてくれるのではないか、とずっと期待しているのですが、残念ながらまだ見せてもらっておりません。いや、祖母はちょくちょく私の夢に出てくるんですが、どうも現世の鯛焼アイスに未練があるらしく、出てくるときは決まって台所の冷蔵庫の前にいるんです。生前と同じく、ひとりで食べるのは気が引けるのか、「一緒に食べるか?」といっては冷凍室からアイスを2つとりだすのです。

でも、死んだらどうなるかというのは、古今東西、人間にとって最大の関心事のひとつです。このたび弊社が刊行する ティク・ナット・ハン師の『アート・オブ・リビング』は、「生の技法」ともいえるタイトルの背後にひそむ「死」を通奏低音としつつ、「空」から「涅槃」までの7つの瞑想を通じて、仏の教えとマインドフルネスを説くものです。

この本には師がおそらくはじめて披露するであろう独特な思索がいくつもあります。そのひとつが独自の身体論。仏教では法身・報身・応身の三身論がよく知られますが、師のそれは八身論! どうしてそんなに体があるの? とツッコミたくなりますが、あわてない、あわてない。それに仏教は心身二元論ではないので、いったん「体」を「自分」とか「私」と言い換えてもいいかもしれません。

トマス・アクィナスは「ペルソナ」を「自存する関係」と定義したそうですが、「自存」とは独立した個、「関係」とは他のものとの関わりですから、何だか矛盾しているようにも見えます。しかし考えてみれば、私には他人の痛みも他人の考えもわからず、いわば私とは世界そのものであるというか、永井哲学ふうにいえば「独在」しているのに、その一方で、私は他者や環境との関わりにおいて存在するという矛盾した何かです。他との関係において私がある、とすると、肉体としての私はもちろん、共同体との関係における私、仏法との関係における私、宇宙との関係における私など、いろいろあってもおかしくない。でも、そうすると、「私の死」とは何でしょう? このあたり、ティク・ナット・ハン師の縦横無尽な思索をぜひお楽しみいただきたいと思います。

そのほかにも、本書では『臨済録』が大きくとりあげられていることや、刹那滅の解釈、涅槃とは何かなど、ハッとさせられることが山のようにあるのですが、ネタバレになりそうなので、ここでは口をつむりませう。

思えば、ティク・ナット・ハン師が遷化してはや3年がすぎました。この本は、2014年に師が脳梗塞で倒れる直前の法話を編集したものですが、師には何か予感があって、死について語らねばならぬと考えたのかもしれません。

本書のなかには、あるジャーナリストから「今世で何かやり残したことがありますか」と質問されたエピソードも出てきます。師は、「死ぬ前にやっておきたいことは何もないのです」。なぜでしょうか。そこにアート・オブ・リビング、生の極意があるのです。(K2)

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■目次■
▼webマガジン「web春秋 はるとあき」
▼「じんぶん堂」好評連載中!
▼新刊案内(9月刊行)
▼近刊案内(10月刊行予定)
▼書評・重版情報
▼営業部だより

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☆ webマガジン「web春秋 はるとあき」☆
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●イベントレポート●
○翻訳家、マインドフルネスを語る 穂積由利子 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/categories/1143
2025年2月から3月にかけてギャラリー平左衛門(千葉県流山市)で開催されたトークイベント「翻訳者が語るマインドフルネス」のレポートです(全4回)。
【第1回】マインドフルネスへのいざない → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/9087

●好評連載●
○軽刈田凡平の新しいインド音楽の世界 軽刈田凡平 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/categories/1119
いま世界でもっとも面白い音楽シーンをめぐる連載。案内人は新進気鋭のインド音楽ライター、軽刈田凡平(かるかった・ぼんべい)
【第6回】ターバン姿のギャングスタ → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/9131

○死にたがり読書録 吉田隼人 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/categories/972
小説や哲学書などを縦横無尽に渉猟し、自らの生きづらさに読書を通じて向き合う。
【第4回】スキゾ未遂、もしくは〈わたくし〉未遂 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/9152

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★「じんぶん堂」好評連載中!★
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出版社と朝日新聞社による、“人文書の魅力を発信していくプロジェクト” 「じんぶん堂(powered by 好書好日)」では書籍紹介や読み物など、魅力的な内容をお届けしています。ぜひご覧ください。※木曜日更新(月3回)

◇9月18日 公開◇
「オレンジに染まる」――『プロパガンダ』が鳴らす警鐘 → https://book.asahi.com/jinbun/article/16006516
◇9月25日 公開◇
プロパガンダは民主主義を自壊させるか--ジャック・エリュール『プロパガンダ』を読む → https://book.asahi.com/jinbun/article/16030999
「社会学の金字塔」ともいうべき名著をどのように読むべきなのか。帝京大学経済学部准教授・福島知己氏が、著者エリュールの生涯と時代背景、そして「プロパガンダの技術」について解説。
書籍はこちらから → 『プロパガンダ』

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★ 新刊案内(9月刊行)★
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●『台風と共に――山田無文老師の禅境に参ずること七十三年』
則竹 秀南 著
四六判/200頁/1,980円
台湾で生まれ、戦中・戦後の苦難をくぐりぬけながら、稀代の禅僧・山田無文老師に仕え、その指導のもと、ともに海外に国内に旅しつつ、禅の本質にめざめていく半生の記録。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393144459.html
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●『社会の未来――1919年の講演録〈新装版〉』
ルドルフ・シュタイナー 著 / 高橋 巖 訳
四六判/240頁/3,520円
人智学の共同体銀行をはじめ、シュタイナー学校、農場、病院等の建設の基礎となったシュタイナーの社会思想がわかる1冊。時代に抗して語られた持続可能な新しい「社会の未来」。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393325742.html
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●『社会問題の核心〈新装版〉』
ルドルフ・シュタイナー 著 / 高橋 巖 訳
四六判/216頁/3,520円
〈経済〉の原則が〈精神〉と〈法〉の領域を侵犯する近代の誤謬を論じた〈社会三分節化論〉。労働と賃金、教育と国家等の関係を根本から問い直し、新しい社会像を構想する。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393325759.html
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●『苦悩する人間〈新装版〉』
ヴィクトール・E・フランクル 著 / 山田 邦男、松田 美佳 訳
四六判/240頁/2,860円
苦悩こそ「人生の意味」や「自己を超えた超越」へと導くものである。――人間精神の尊厳と自立性を訴えたフランクルが、その内奥に秘めた思想・信仰を明かした感動の書。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393365847.html
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●『愛する人を亡くした時〈新装版〉』
アール・A・グロルマン 著 / 日野原 重明 監訳 / 松田 敬一 訳
四六判/256頁/2,750円
子ども、夫や妻、親、友人と死別した人の実体験を紹介。喪失の悲しみ・苦悩の深さを克明に描き、豊富なカウンセリング経験から「死別の悲しみを癒す10の指針」を示す。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393365854.html

♪楽譜〈新版〉♪ 計1点
●『[新版]リスト ピアノ作品集[4]――ハンガリー狂詩曲 スペイン狂詩曲』
井口 基成 編集・校訂・運指 / 近藤 嘉宏 解説
菊倍判/228頁/3,520円
ハンガリー狂詩曲 S.244
 第1番 嬰ハ短調
 第2番 嬰ハ短調
 第3番 変ロ長調
 第4番 変ホ長調
 第5番 ホ短調《悲しい英雄物語》
 第6番 変ニ長調
 第7番 ニ短調
 第8番 嬰ヘ短調
 第9番 変ホ長調《ペシュトの謝肉祭》
 第10番 ホ長調《前奏曲》
 第11番 イ短調
 第12番 嬰ハ短調
 第13番 イ短調
 第14番 ヘ短調
 第15番 イ短調《ラコッツィ行進曲》
スペイン狂詩曲 S.254

新版に寄せて
解説
 フランツ・リストのピアノ音楽
 楽曲解説

〔楽譜208頁+解説24頁〕
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393918265.html

*今月の営業部イチオシ本*
●『[梅津時比古セレクション] [1]ゴーシュを聴く――宮沢賢治研究』
梅津 時比古 著
四六判/416頁/4,400円

音楽文化をめぐる研究・評論の新しい地平。〔梅津時比古セレクション〕刊行開始!
当巻には近代主義をテーマとして尖鋭な二作品、芸術選奨文部大臣賞・岩手日報文学賞賢治賞に輝く『《セロ弾きのゴーシュ》の音楽論』と賢治研究のユニークな話題作『《ゴーシュ》という名前』を収録。解説は三浦雅士氏。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393936184.html

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★ 近刊案内(10月刊行予定)★
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●『仏教する日本I――見えるものと見えざるもの』
松岡 正剛、福家 俊彦、末木 文美士 著
四六判/336頁/2,750円
日常の世界〈顕〉と神仏の世界〈冥〉の関係や最澄の大乗戒、草木成仏説、鎌倉仏教の見直しなど、仏教を通して日本の多様性を語る、空前絶後の仏教講義・前編。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393134603.html
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●『アート・オブ・リビング――生きるということ』
ティク・ナット・ハン 著 / 池田 久代 訳
四六判/288頁/2,420円
生とは何か、死とは何か、死後に何が起きるか。まるで自らの死を予感していたような鋭利な考察を展開。「マインドフルに生きる技法」の精髄を説いた晩年の師の思想の高み。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393334065.html
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●『お坊さんになりたかった哲学者と哲学者になりたかったお坊さん「有時」を遊ぶ』
藤田 一照、中村 昇 著
四六判/288頁/2,530円
『正法眼蔵』で特に関心を集めてきた「有時」の巻について曹洞宗僧侶と哲学者が対談。第1部では『正法眼蔵』との出会いなどを語り、第2部では実際に「有時」の巻を読解。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393341261.html
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●『[アジア文芸ライブラリー] 彷徨――あなたが選ぶ赤い靴の冒険』
インタン・パラマディタ 著 / 太田 りべか 訳
四六判/612頁/4,400円
これは、あなたが選ぶ物語。ジャカルタで英語教師をしている「あなた」は悪魔と契約して、冒険に連れて行ってくれる赤い靴を手に入れた。さあ、移動を国境をめぐる旅へ。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393455135.html
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●『遊子録――続・日本遊歩録』
佐子 武 著
A5判/288頁/2,200円
気の向くままに旅に出て、北へ南へさまよえば、今は寂れた宿場町、人に知られぬ祭の中にひそかに息づくこの国の姿。カラーとモノクロ多数の写真と共に記録する本当の日本。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393495445.html
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●『[春秋社音楽学叢書]言葉を奏で、音楽を読む――世紀転換期の〈フランス・オペラ〉をめぐって』
林 信蔵、中村 翠、川上 啓太郎 編著
四六判/312頁/3,300円
文学者と作曲家が直接コラボレーションする際、どのような創造性が生まれるのか。作家ゾラのオペラ共作を中心に、いかに「フランス的な音楽劇」が創造されたかを描き出す。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393932414.html
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♪楽譜〈新装版〉♪ 計1点

●『ヘンデル集〈新装版〉』
井口 基成 編集・校訂
菊倍判/152頁/2,530円
組曲集(11曲)
 第1番 イ長調 HWV 426
 第3番 ニ短調 HWV 428
 第4番 ホ短調 HWV 429
 第5番 ホ長調〔調子のよいかじ屋〕 HWV 430
 第6番 嬰ヘ短調 HWV 431
 第7番 ト短調 HWV 432
 第9番 ト短調 HWV 439
 第10番 ニ短調 HWV 436
 第11番 ニ短調 HWV 437
 第14番 ト長調 HWV 441
 第16番 ト短調 HWV 452
3つの練習曲
 1)前奏曲、アリアと変奏曲 HWV 434
 2)メヌエット HWV 434
 3)シャコンヌと変奏曲 HWV 435
シャコンヌと変奏曲 ト長調 HWV 442
幻想曲 ハ長調 HWV 490
フーガ ト短調 HWV 605
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393918524.html

(※刊行時期は変更となる場合がございます。)

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☆ 書評・重版情報 ☆
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○琉球新報9/28にて『新編 琉球の人文』が紹介されました
2025年9月28日の琉球新報朝刊にて、柳 宗悦 著 / 宇田 智子 解題『新編 琉球の人文』の書評が掲載されました。
評者は、著述家の三枝克之氏です。
「なぜ柳は沖縄の伝統工芸だけでなく、琉球語や墳墓、信仰、歌や踊りなどにも、あれほど熱い想いを綴ったのか。ぜひ解題を引きつつ、着目してほしい」

♪ 重版情報 ♪
●『インタースコア――共読する方法の学校』
松岡 正剛、 イシス編集学校 著
四六判/2015年12月刊/定価2,420円【5刷】
松岡正剛が「自らの最高傑作」と自信をもって語る、「イシス」(ISIS)とは何か。
イシスのコンセプトと歴史、稽古の現場で実際に行われていること、その秘密を開陳。内外の証言をもとに謎に包まれたイシス編集学校の姿を浮かび上がらせる。
●本書は電子版もございます。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393333488.html

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□営業部だより□
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10月4日は、医師・ 日野原重明の誕生日(1911-2017)です。死の臨床研究会を結成し、ターミナルケアや介護の充実、患者参加の医療など、現代医療の改善に向けて活動を続けました。また、彼は成人病にかわる「生活習慣病」という新語の命名者でもあります。1999年に文化功労者顕彰を受けた日野原は、医学と人間の生き方・死にかかわる数多くの著書・訳書を残しました。
このたび、復刊の運びとなりました アール・A・グロルマン 編著 / 日野原重明 監訳 / 松田敬一 訳『愛する人を亡くした時〈新装版〉』は、子ども、パートナー、親、友人と死別した人の実体験を紹介した上で、喪失の悲しみ・苦悩の深さを克明に描き、豊富なカウンセリング経験から導きだした「死別の悲しみを癒す10の指針」を示した本です。
1986年の初版から、長く読み継がれてきた本書を、この機会におすすめいたします。(E)
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□春秋社 メールマガジン□ 毎月1回(第1金曜日)配信
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■バックナンバー
【Vol.078】 2025年 9月 5日 配信 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/9172
【Vol.077】 2025年 8月 1日 配信 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/9134
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