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メールマガジン Vol.051

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 春秋社 メールマガジン【Vol.051】
    2023年 6月 1日配信
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 巻頭言!
 1963年製作の映画『競輪上人行状記』(日活)は、寺の次男坊である教師・春道が紆余曲折を経て競輪の予想屋になってしまうという悲喜劇であるが、終盤、春道が競輪場で熱弁をふるう姿が圧巻だ。彼は観衆の前でこう叫ぶ。
「俺たちには煩悩という汚れがこびりついて取れない。この汚れた体のまま、阿弥陀さまにおすがりするんだ!」
また「お前らは心をむなしうして予想を立てるということができないだろうから、俺が立てた予想通りに買ってこい。」とも言うのだから爽快だ(以上の台詞は筆者の記憶によるもので、正確な記述でないことをご容赦願いたい)。興味を持った方はぜひ、観ることをおすすめする(Amazon Prime Videoなどで視聴可)。
さて、その『競輪上人行状記』で春道を演じたのが、俳優・小沢昭一(1929-2012)である。彼はさまざまな映像作品への出演や、何と言っても約40年続いたラジオ番組「小沢昭一的こころ」で広く知られている。しかし、彼が世に残したものはそれだけではない。俳優として、芸人として小沢本人が全国各地を回り現地録音した音楽芸能とインタビューをレコードにまとめた『ドキュメント 日本の放浪芸』は、萬歳・ごぜ唄・猿回しから節談説教、さらにはストリップにいたるまで収録した〈音〉によるドキュメントである。この『ドキュメント 日本の放浪芸』制作の舞台裏をつぶさに検証し、音と語りによるドキュメント、あるいは「声」の録音構成というひとつの文化運動の在り方を浮き彫りにしたのが 鈴木 聖子『掬われる声、語られる芸――小沢昭一と『ドキュメント 日本の放浪芸』』である。
 本書は、小沢が「放浪芸」に見たもの、求めたものは何であったのか、また『ドキュメント 日本の放浪芸』の本来の制作意図、さらに実現のコンテクストとそこに働く力学を丹念に追っていく。著者は『〈雅楽〉の誕生――田辺尚雄が見た大東亜の響き』(2019年、春秋社)で第41回サントリー学芸賞〔芸術・文学部門〕を受賞した近現代日本音楽史・文化資源学の専門家である。なぜ小沢が映像記録ではなく、「音と語り」を残すことにしたのか――。この点について分析した著者の手腕はとてもあざやかだ(この部分に関しては、特に「第四章 ストリップを聴くこと」をぜひ読んで欲しい)。
『競輪上人行状記』の春道による辻説法は、小沢の迫力あるがらがら声や抑揚、そしてたまに優しく諭すようになる調子も相まって、強く印象に残る。それこそ、映像でなく音だけで聴いたとしても、その人の耳に焼き付くであろう。もちろん、小沢の「演技」を「観る」ことが好きであった人も多かったと承知の上だが、彼がラジオで長寿番組を担当し続けたというのも、小沢は何より「話芸」の人であったと言えるのではないかと思わせる一面である。(E)

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■目次■
▼webマガジン「web春秋 はるとあき」
▼「じんぶん堂」好評連載中!
▼新刊案内(5月刊行)
▼近刊案内(6月刊行予定)
▼重版情報
▼編集後記

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☆webマガジン「web春秋 はるとあき」☆ https://haruaki.shunjusha.co.jp
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○新連載○
○「フォルモサ南方奇譚――南台湾の歴史・文化・文学」 倉本 知明
南台湾各地を舞台に、歴史や伝承を辿りながら知られざる台湾の姿を描き出すエッセイ。
【第1回】 羅漢門の皇帝陛下 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/7133
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●好評連載●
○「人生というクソゲーを変えるための仏教」 ネルケ 無方
人生というクソゲーを遊んで楽しい本当のゲームに変える方法を探る。
【第11回】 人類の歴史はたった一人のためにあった → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/7227

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★「じんぶん堂」好評連載中!★
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出版社と朝日新聞社による、“人文書の魅力を発信していくプロジェクト” 「じんぶん堂(powered by 好書好日)」では書籍紹介や読み物など、魅力的な内容をお届けしています。ぜひご覧ください。※毎週木曜日更新(月3回)

◇5月18日 公開◇
医学と宗教が共にめざす「癒しとは何か?」 ――杉岡良彦著『共苦する人間』は医学と宗教の協働を探る(前篇)
https://book.asahi.com/jinbun/article/14903291
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◇5月25日 公開◇
医学と宗教が共に問う「人間とは何か?」――杉岡良彦著『共苦する人間』は医学と宗教の協働を探る(後篇)
https://book.asahi.com/jinbun/article/14909022

→ 書籍はこちらから『共苦する人間――医学哲学から宗教と医学を考える』https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393324080.html

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☆新刊案内(5月刊行)☆ https://www.shunjusha.co.jp/search/new.html
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●日蓮学の現代
浜島 典彦 編著
A5判/608頁/14,300円
日蓮が身延山に入山して750年を迎えるにあたり、幾多の法難を乗り越え教化に努めた日蓮の精神と教えを、幅広い分野の専門家が現代の視点をふまえて再び問い直す論文集。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393111390.html
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●[シリーズ思想としてのインド仏教]中道を生きる 中観
計良 龍成 著
四六判/272頁/2,420円
従来の空思想からではなく、実践にも関係する有無の両極端を離れた中道の視点から、予備知識・思想史・縁起と中道の思想の構成でインド中観思想を論じた画期的な解説書。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393134443.html
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●賭ける仏教――出家の本懐を問う6つの対話[創業105周年記念復刊]
南 直哉 著
四六判/288頁/2,200円
禅の鬼才が得度以来紡ぎだしてきた思索と修行の実体験から語る、仏教と禅の核心。道元禅師に倣い釈尊本来の役立つ仏教を復活させるための構想をも示すスリリングな対話篇。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393134665.html
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●悲嘆とケアの神話論――須佐之男と大国主
鎌田 東二 著
四六判/280頁/2,420円
引き裂かれ呻吟する古の神々。須佐之男の流浪、大国主の「国譲り」、その悲哀の物語詩に、癒しとケアの未来を展望する。吟遊文化と学術を切り結び現代に拓く、渾身の書。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393311370.html
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●[自由と愛の人智学 2]キリスト衝動――聖杯の探求
ルドルフ・シュタイナー 著 / 高橋 巖 訳
四六判/264頁/3,080円
ゴルゴタの秘儀が人類の進化に及ぼす影響はどう認識されるのか。キリスト衝動(大切な霊的衝動の認識)を理解するための人智学的アプローチ。シュタイナーの最重要講演集。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393325605.html
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●掬われる声、語られる芸――小沢昭一と『ドキュメント 日本の放浪芸』
鈴木 聖子 著
四六判/328頁/2,750円
萬歳・ごぜ唄・猿回しをはじめとした稀少な音楽芸能から節談説教、さらにストリップに至るまで、「放浪芸」を追いながら自身の芸と向き合い続けてきた小沢昭一の姿に迫る。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393441701.html
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●太極拳養生法[創業105周年記念復刊]
帯津 良一 / 趙 耀輝 著
A5判/192頁/2,200円
ホリスティック医学の大家・帯津良一と太極拳の名手・趙耀輝の共著。「攻めの養生法」として太極拳の実践を説いた画期的な書。太極拳の動きを図解入りで分かりやすく解説。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393714171.html

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★近刊案内(6月刊行予定)★ https://www.shunjusha.co.jp/search/next.html
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『蜜の味をもたらすもの――古代インド・スリランカ仏教説話集』
及川 真介 訳
A5判/512頁/4,950円
13世紀にスリランカで編纂され、今もなお東南アジアで読み継がれる仏教説話集。布施の重要性と、それによる天界へ転生する功徳を説く103話を一般向けに現代語訳。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393113639.html
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『人生論――「自受用三昧」から「自然法爾」へ』
黒崎 宏 著
四六判/208頁/3,080円
老哲学者が説く人生の極意。道元、荘子、パウロ、西田幾多郎、セネカら、思想家たちの言葉から、あるがままを受け入れ、ただ生きる、それが幸福に生きる方途だと明らかに。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393324103.html
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『鳥を読む――文化鳥類学のススメ』
細川 博昭 著
四六判/352頁/2,750円
なぜ鳥は私たちを魅了し続けるのか? 時と場所をこえて神話、伝承、文学、芸術などに描かれてきた、密接な関係にある鳥をめぐる歴史という名の物語。驚きの文化鳥類学。

(※刊行時期は変更となる場合がございます。)

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□編集後記□
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 鍵盤ハーモニカと聞いて、みなさんはどんな楽器を想像されるでしょうか。すぐに小学校での「おんがく」の授業風景が思い出された方は記憶力の優れた方に違いありません。
 小社から刊行しました『鍵盤ハーモニカの本』は安定した仕事を退職してまで全人生を「鍵盤ハーモニカ」に捧げる決意をした著者、南川朱生(ピアノニマス)氏による深い愛に満ちた、読んで、見て、楽しい鍵盤ハーモニカ概論です。その歴史から構造まで、あらゆる角度から鍵盤ハーモニカに迫る圧巻の一冊となっています。
 さて、まだこの「楽器」をいまいち思い出せない方もいらっしゃるかと思います。そんな方は「百聞は一見にしかず」、ぜひ著者が演奏している姿をご覧ください! TBSラジオ「アシタノカレッジ」出演時の様子が公開されています。[YouTube:TBSラジオ公式チャンネル 「鍵盤ハーモニカ奏者・南川朱生さん生演奏♪【アシタノカレッジ】5月11日(木)著者の演奏は23分ごろから → https://www.youtube.com/watch?v=nWh1hwceBhU
 ご覧いただくと驚かれる方も多いかもしれませんが、「想像していた」鍵盤ハーモニカとも少し違うかもしれません。こうした楽器の魅力がこの一冊にギュッと詰め込まれているのです。
 各地で梅雨入りの季節を迎えました。雨の日にゆっくり演奏に耳を傾けながら、じっくり本を読むのはいかがでしょうか。(A)

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□春秋社 メールマガジン□ 毎月1回(月はじめ)配信

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(TEL:03-3255-9611 FAX:03-3253-1384)
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■バックナンバー
【Vol.049】https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/7152(2023年4月1日 配信)
【Vol.050】https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/7262(2023年5月1日 配信)
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