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メールマガジン Vol.052

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 春秋社 メールマガジン【Vol.052】
    2023年 7月3日配信
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 巻頭言!
 「神は死んだ!」と宣言した偉大な哲学者ニーチェ。真理の存在を否定して、さまざまな解釈が存在するだけと主張したとされるニーチェ。ハイデガー、バタイユ、ドゥルーズ、デリダなど多くの哲学者・思想家に影響を与え、ポストモダンのヒーローとなったニーチェ。「深淵をのぞくとき、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」など数々の名言を残し、日本でも大人気の哲学者ニーチェ。しかし、われわれの知るその姿が、誤解・曲解によって捏造された虚像にすぎないとしたら?
 ニーチェ像の捏造犯はたくさんいますが、まずは不肖の妹エリーザベト。エリーザベトは、巧妙な宣伝活動でナチスに取り入り、ニーチェをナチスの公認哲学者に祭りあげられるよう運動します。その甲斐あって、ヒトラーはエリーザベトが設立したニーチェ資料館に資金を援助し、たびたび訪れ、エリーザベト死去の折には葬儀にも参列したほどでした。でもニーチェ本人は、反ユダヤ主義や民族的熱狂を嫌悪していたのですぞ!
 おまけにエリーザベトは、ニーチェが公表する意図のなかった覚え書きを編集して、『力への意志』という「偽書」をでっちあげ、ニーチェの運命の人ルー・ザロメとの仲を裂くためにあれこれ画策し、ニーチェが著作をまとめて全集を刊行しようとしたとき、編集者を勝手に解任して邪魔するなど、とにかく、ろくなことをしません。
 もちろん妹だけが悪いんじゃありません。20世紀最大の哲学者のひとりといわれるハイデガーは――彼もナチスへの関与が囁かれる人ですが――「ニーチェの本当の思想は遺稿のなかにあるのであって、存命中に出版した著作のなかにあるのではない」なんて言うものだから、ニーチェが精魂こめて完成した書籍のほうが等閑視され、意図的に捨てたり公刊しなかった草稿や覚え書きが重視されて、恣意的に思想を読みとられることにもなりました。
 それにしても、みんな、ニーチェを自分勝手に利用したがるようで、日本でもニーチェの名言を集めた本が出版されたりしていますが、ニーチェの思想を理解しようとしているとは思えないものが多いです。
「私は私自身だ。何より、私をほかの誰かと間違えないでくれ!」
 これは『この人を見よ』のなかの言葉ですが、まさにニーチェの魂の叫びではないでしょうか。
 では、そうやって誤解され曲解されてきたニーチェの本当の思想とは、どういうものなのか? それを解き明かすのが、このたび刊行される『わかる!ニーチェ』です! 特に「分析系」と呼ばれるスタイルによるニーチェ研究の最前線から、世界中の人々が抱いている歪められたニーチェ像を手際よく批判し、ニーチェの著作や資料を精査して真実のニーチェに迫っていく。
 著者の ピーター・ケイルは、16歳で学校をドロップアウトし、プロ・ミュージシャンをめざしたものの挫折、夜間学校に通って大学に進学し、哲学に目覚めて、いまやオックスフォード大学の准教授という変わり種。
 記述も明快で、ボリュームも手軽な本ですから、あえて内容を紹介するまでもないと思います。ぜひ読んでほしいのです。現代のニーチェ研究の水準を提示する新時代の入門書が、『わかる!ニーチェ』なのです。(K2)

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■目次■
▼webマガジン「web春秋 はるとあき」
▼「じんぶん堂」好評連載中!
▼新刊案内(6月刊行)
▼近刊案内(7月刊行予定)
▼重版情報
▼編集後記

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☆ webマガジン「web春秋 はるとあき」☆ https://haruaki.shunjusha.co.jp/
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○新連載○
○ 「 フランスでのカンパネッラ」 澤井 繁男
末期ルネサンスの異端的修道士で自然魔術師でもあったカンパネッラの苦難に満ちた人生の果て、フランスに亡命し終焉を迎えるまでの最後の刻を描く。
【第1回】 フランスでのカンパネッラ 上 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/7242
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●好評連載●
○「文字の渚」 岩切 正一郎
文学、詩歌、戯曲、映画。古今東西の表現芸術のなかから、言葉の「変形」を読み解き、芸術の持つ力を再考する。
【第4回】 生成系AIに質問してみた → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/7307

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★「じんぶん堂」好評連載中!★
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出版社と朝日新聞社による、“人文書の魅力を発信していくプロジェクト” 「じんぶん堂(powered by 好書好日)」では書籍紹介や読み物など、魅力的な内容をお届けしています。ぜひご覧ください。※毎週木曜日更新(月3回)

◇6月8日 公開◇
情報科学で音楽学と心理学を仲介する →
https://book.asahi.com/jinbun/article/14923255
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◇6月15日 公開◇
若手研究者にきく、音楽研究の領域横断性 →
https://book.asahi.com/jinbun/article/14925490

→ 書籍はこちらから 『音楽と心の科学史――音楽学と心理学が交差するとき』https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393930458.html

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☆新刊案内(6月刊行)☆ https://www.shunjusha.co.jp/search/new.html
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●蜜の味をもたらすもの――古代インド・スリランカ仏教説話集
及川 真介 訳
A5判/512頁/4,950円
13世紀にスリランカで編纂され、今もなお東南アジアで読み継がれる仏教説話集。布施の重要性と、それによる天界へ転生する功徳を説く103話を一般向けに現代語訳。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393113639.html
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●人生論――「自受用三昧」から「自然法爾」へ
黒崎 宏 著
四六判/192頁/3,080円
老哲学者が説く人生の極意。道元、荘子、パウロ、西田幾多郎、セネカら、思想家たちの言葉から、あるがままを受け入れ、ただ生きる、それが幸福に生きる方途だと明らかに。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393324103.html
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●鳥を読む――文化鳥類学のススメ
細川 博昭 著
四六判/352頁/2,750円
なぜ鳥は私たちを魅了し続けるのか? 時と場所をこえて神話、伝承、文学、芸術などに描かれてきた、密接な関係にある鳥をめぐる歴史という名の物語。驚きの文化鳥類学。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393424629.html

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★近刊案内(7月刊行予定)★ https://www.shunjusha.co.jp/search/next.html
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【創業105周年記念出版】
[原始仏典IV]『小部経典 第一巻』
中村 元 / 前田 專學 監修  羽矢 辰夫 / 矢島 道彦 / 榎本 文雄 編集  中村 元 / 羽矢 辰夫 訳
A5判/392頁/8,800円
『パーリ語三蔵』の「経蔵」に収められている『小部経典(クッダカ・ニカーヤ)』の現代語訳。「クッダカパータ」「ダンマパダ」「ウダーナ」「イティヴッタカ」を収録。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393113646.html
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『現代日本語訳 日蓮の観心本尊抄』
正木 晃 著
四六判/288頁/3,080円
唱題することについて理論的に実証した代表作を、難解な仏教用語を避けて誰でもわかるよう現代語訳。執筆の動機と各問答の要約も載せ、難解な議論もすっきり理解。
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『わかる!ニーチェ』
ピーター・ケイル 著  大戸 雄真 / 太田 勇希 訳
四六判/232頁/2,420円
日本では知られていない英米圏のニーチェ研究の成果を気鋭の哲学者が紹介。身近な事例も多く用い、ニーチェの最重要部分を一般の読者にもわかりやすく簡潔に描く入門書。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393323960.html
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『からだは星からできている』[創業105周年記念復刊]
佐治 晴夫 著
四六判/256頁/1,980円
バッハを自ら弾きながら、宇宙誕生の瞬間に耳をすます……。親しみやすく、奥深い言葉で、科学・音楽・宗教の枠組みと新たな可能性を常に見つめ、発信してきた著者の集大成。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393360682.html
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『女性を宇宙は最初につくった』[創業105周年記念復刊]
佐治 晴夫 著
四六判/304頁/2,200円
月を含む宇宙論と生命研究の最新事情を踏まえながら、「時間」の意味や、「男・女」の性差のほんとうの役割、そして「音楽」の価値について、やさしい語り口で問いかける。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393360699.html
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『リスト編曲ベートーヴェン交響曲全集[1]』[創業105周年記念復刊]
小林 仁 校訂・運指 丸山 桂介・解説
菊倍判/232頁/4,290円
ベートーヴェンの9つの交響曲を、リストがピアノ独奏用に編曲。詳しい解説と、演奏上のアドバイスが付き、楽譜には運指と楽器名が補充されたオリジナル版。[第1番~第5番]
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393918203.html
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『リスト編曲ベートーヴェン交響曲全集[2]』[創業105周年記念復刊]
小林 仁 校訂・運指  丸山 桂介・解説
菊倍判/256頁/4,290円
ベートーヴェンの9つの交響曲を、リストがピアノ独奏用に編曲。詳しい解説と、演奏上のアドバイスが付き、楽譜には運指と楽器名が補充されたオリジナル版。[第6番~第9番]
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393918210.html
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『純正作曲の技法』[創業105周年記念復刊]
ヨハン・フィリップ・キルンベルガー 著  東川 清一 訳
A5判/464頁/9,900円
18世紀の偉大なる音楽理論家、キルンベルガーの主著の翻訳。師であるバッハの作曲法をその原理・原則に還元し、本質を理論的且つ実践的に説いた歴史的名著。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393930465.html

(※刊行時期は変更となる場合がございます。)

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★ 重版情報 ★
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『それでも人生にイエスと言う』
V.E. フランクル 著  山田 邦男 / 松田 美佳 訳
四六判/224頁/1,870円
刊行から30周年!
ナチスによる強制収容所の体験として全世界に衝撃を与えた『夜と霧』の著者が、その体験と思索を踏まえてすべての悩める人に「人生を肯定する」ことを訴えた感動の講演集。【好評73刷】
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393363607.html

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□編集後記□
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 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続いています。
 最近武装反乱を起こした民間軍事会社ワグネルが、ことし5月に完全に掌握したと主張していたバフムトは、直近ではウクライナ軍の反転攻勢で再び攻防が激しくなっているようで、依然泥沼の様相を呈しています。
 戦争は、時代や場所が異なっても、それによって生命や当たり前の日常が脅かされるという点で、決して容認できないものであることに変わりありません。G7広島サミットで各国の首脳たちが平和公園や原爆資料館を訪問したことも記憶に新しいですが、太平洋戦争時にとてつもない災禍に見舞われた日本は、ロシア・ウクライナ問題についていまだ解決の糸口が見つからないこのタイミングで、いったい何を発信できたのでしょうか。
 オーストリアの精神科医 V・E・フランクルは、第二次世界大戦時、ナチスによる強制収容所へ送られ、家族の多くを失うという壮絶な体験をしました。そこから導き出された「生きる」ことへの答えが簡明に語られた講演集が、『それでも人生にイエスと言う』です。
 同じく強制収容所での体験をつづった『夜と霧』によって全世界に衝撃を与えたフランクルは、本書ですべての悩める人に「人生を肯定する」ことを訴えています。戦争により過酷な生を生きねばならなかった彼が「いまではもう、「人生は私になにを期待しているか」と問うだけです。人生のどのような仕事が私を待っているかと問うだけなのです。」と語りかける本書は、数多くの読者に愛読され、小社の邦訳刊行から今年で30周年を迎えます。
 ウクライナをはじめ、世界の至る所で戦争・紛争が絶えない今この時に、『それでも人生にイエスと言う』から、時代を超えて私たちへ渡されたメッセージを受け取っていただければ幸いです。(E)

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□春秋社 メールマガジン□ 毎月1回(月はじめ)配信

発行:株式会社 春秋社
〒101-0021 東京都千代田区外神田2-18-6
ホームページ: https://www.shunjusha.co.jp/
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■バックナンバー
【Vol.050】 https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/7262(2023年 5月 1日 配信)
【Vol.051】 https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/7339(2023年 6月 1日 配信)
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