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メールマガジン Vol.069

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 春秋社 メールマガジン【Vol.069】
   2024年 12月 6日配信
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 巻頭言
1960年代のインドネシアで起こった大規模な虐殺は20世紀最悪の虐殺のひとつと言われる。ことの発端は1965年、「9.30事件」として記憶される軍事クーデターだった。スハルト少将が主導したクーデターによりスカルノ大統領は失脚、共産党員やその支持者と目された人物には厳しい弾圧が始まった。犠牲者数は今なお明らかでないが、50万から200万人程度と言われている。

虐殺の実行者は罪に問われることもなく、むしろ「英雄」として現在も生活している。そんな彼らに迫った異色のドキュメンタリー映画がある。当初は被害者へのインタビューを目的に撮影していたクルーは、当局によってインタビューを禁止されたため、カメラを虐殺の加害者へと向けることにする。すると彼らは誇らしげに当時の様子を語り始めた。そして、セットを用意して虐殺の様子を再現してもらうと、彼らは往年の暴力行為や拷問を嬉々として演じ始めるのである。ジョシュア・オッペンハイマー監督の『アクト・オブ・キリング』(2012年)とその姉妹編『ルック・オブ・サイレンス』(2014年)は現在、各種の動画配信サービスで視聴することができる。

「この国は暴力に満ちている。誕生して以来、この国はひとつの暴力から別の暴力へと引きずられてきた」と語るのは、インドネシアで初めて国際ブッカー賞の候補になった作家、エカ・クルニアワン。1975年に生まれたエカは、学生時代に独裁者スハルトの退陣とその前後の暴動を経験し、「なぜわれわれはスハルトのような人物を生み出してしまったのか」という問いに突き動かされて作家となった。

オランダによる植民地支配、日本軍による侵略、戦時性暴力、再植民地化と独立戦争、独立後の動乱と政変、そして独裁……。こうした暴力の歴史を軸に、神話や伝承、奇譚などを織り交ぜた奇想天外な小説『美は傷』が、シリーズ〈アジア文芸ライブラリー〉の5作目として今月、刊行される。「インドネシアのガルシア・マルケス」とも呼ばれるエカはマジックリアリズムの手法を用いて百年近いインドネシアの歴史を、諧謔たっぷりに語りなおす。

エカは本作執筆の動機を、「サルマン・ラシュディが『真夜中の子供たち』でインドを語り、ギュンター・グラスが『ブリキの太鼓』でドイツを語ったように、インドネシアについて広く語りたいと思った」と述懐している。そして実際、事実も幻想も含めた「あらゆるインドネシア」が本作には詰め込まれている。

日本とも関わりの深いインドネシアの小説を読んだ経験のある読者はそう多くはないだろう。かつてオランダ領東インドと呼ばれたインドネシアを侵略し、戦後も虐殺を実行した政権を支援した日本のわたしたちは、暢気に他人事として本作を読むことはできない。それでもなお、あらゆるインドネシアのごった煮である本作以上に、はじめてのインドネシア文学として読むのに適した作品はあるまい。(ら)
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■目次■
▼webマガジン「web春秋 はるとあき」
▼「じんぶん堂」好評連載中!
▼受賞情報・書評情報
▼新刊案内(11月刊行)
▼近刊案内(12月刊行予定)
▼重版情報
▼営業部だより

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☆ webマガジン「web春秋 はるとあき」☆ https://haruaki.shunjusha.co.jp/
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●好評連載●
○「人生というクソゲーを変えるための仏教」  ネルケ 無方
人生というクソゲーを遊んで楽しい本当のゲームに変える方法を探る。
【第20回】二人称の永井哲学の可能性について――「あなた一人だけが特別!」 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/8430
●Close-up! この一冊●
○台湾の民主主義を女性の視点で問い直す/陳柔縉『高雄港の娘』〈アジア文芸ライブラリー〉(田中美帆訳)
数々の歴史ノンフィクションを手掛けた陳柔縉による小説『高雄港の娘』の翻訳者で、ライターでもある田中美帆さんによる「訳者あとがき」の全文を公開。(公開にあたり、一部の書式を改めました) → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/8424

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★「じんぶん堂」好評連載中!★
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出版社と朝日新聞社による、“人文書の魅力を発信していくプロジェクト” 「じんぶん堂(powered by 好書好日)」では書籍紹介や読み物など、魅力的な内容をお届けしています。ぜひご覧ください。※毎週木曜日更新(月3回)

◇11月7日 公開◇
情動という問題系 → https://book.asahi.com/jinbun/article/15478719
◇11月14日 公開◇
情動とポスト/ノンヒューマン → https://book.asahi.com/jinbun/article/15487636
書籍はこちらから→ 『情動、メディア、政治――不確実性の時代のカルチュラル・スタディーズ』 https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393334089.html

◇10月24日 公開◇
松岡正剛はマレビトである。 追悼・松岡正剛(1) → https://book.asahi.com/jinbun/article/15465766
◇10月31日 公開◇
松岡正剛は魔神である。 追悼・松岡正剛(2) → https://book.asahi.com/jinbun/article/15475416
書籍はこちらから→ 『[近江ARSいないいないばあBOOK]別日本で、いい。』 https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393333969.html

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☆受賞情報・書評情報☆
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◇『映画館に鳴り響いた音』第46回サントリー学芸賞[社会・風俗部門]受賞◇
柴田 康太郎 著 『映画館に鳴り響いた音――戦前東京の映画館と音文化の近代』が、第46回サントリー学芸賞[社会・風俗部門]を受賞しました。
贈呈式は12月9日(月) に行われる予定です。くわしくは サントリーのウェブサイト をご覧ください。
https://www.shunjusha.co.jp/news/n59221.html

◇読売新聞朝刊12/1にて『ミュージカルの解剖学』が紹介されました◇
2024年12月1日の読売新聞朝刊にて、 長屋 晃一 著 『ミュージカルの解剖学』の書評が掲載されました。
評者は、美術史家・国学院大客員教授の小池寿子(こいけ・ひさこ)氏です。
「ミュージカル以外のマンガやアニメ、映画、昨今話題を集める2.5次元舞台など二次制作への応用を示唆しており、若い作家たちの刺激になるに違いない。」
https://www.shunjusha.co.jp/news/n59492.html

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★新刊案内(11月刊行)★  https://www.shunjusha.co.jp/search/new.html
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●『『正法眼蔵』「菩提薩タ四摂法」提唱』(タは土へんに垂)
青山 俊董 著
四六判/208頁/2,200円
道元禅師の『正法眼蔵』のうち、布施・愛語・利行・同事を説いた四摂法の巻を、稀代の禅師が生き生きと語り尽くす。天地いっぱいの命を授かって生きるための四つの心構え。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393150047.html
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●『西田哲学の仏教と科学――「場所的論理の立場から、科学を考へ直す」』
坂本 慎一 著
四六判/344頁/3,520円
京都学派が触れてこなかった近代真言教学と数学、科学の影響を初めて解明。場所の論理と曼荼羅、研究スタイルと和算など、今後の西田哲学研究を大きくかえる画期的論考。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393311455.html
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●『分析形而上学の最前線――人、運命、死、真理』
森田 邦久、柏端 達也 編著
四六判/440頁/4,180円
人はどんな存在か、運命は決定しているか、死はいつ悪か、真理を決めるのは何か。四つのテーマを異なる立場から立論、お互いにコメント、再反論しあう新スタイルの論文集。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393322321.html
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●『死刑制度を問う――仏教・浄土真宗の視点から』
大谷 光真 著
四六判/194頁/2,750円
宗教界からも様々な声が挙がっている死刑制度。浄土真宗本願寺派前門主が、日本の死刑制度をめぐる社会と倫理の問題を整理し、そのあり方を問う。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393334096.html
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●『日本数寄〈新装版〉』
松岡 正剛 著
四六判/384頁/3,520円
いま、日本は漠然としすぎている。何かが発揮されないまま、すっかり沈殿したままになっている。日本文化史にひそむ話題を取り上げ、その行間の一端に、今日につながる隙間を透く。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393334119.html
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●『こころを変えるNLP――神経言語プログラミング基本テクニックの実践〈新装版〉』
スティーブ・アンドレアス、コニリー・アンドレアス 著 / 橋本 敦生 監訳 / 浅田 仁子 訳
四六判/384頁/3,630円
カウンセリングの新潮流として注目されるNLP(神経言語プログラミング)の基本テクニックをセミナー形式で紹介。難しいと思って敬遠していた人にもお薦めの一冊。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393360705.html
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●『マインドフルネス 気づきの子育て』
ジョン・カバット-ジン、マイラ・カバット-ジン 著 / 穂積 由利子 訳
四六判/452頁/3,300円
今、ここへの気づきが子の内面にかけがえのない栄養を与え、親としての人生を豊かにする。マインドフルネスの父が実際におこなった子育てとは。ティク・ナット・ハン他推薦。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393365731.html
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●『社会主義・経済計算・起業家精神』
ヘスース・ウエルタ・デ・ソト 著 / 蔵 研也 訳
A5判/408頁/6,050円
社会主義は人々に幸福をもたらしえたか…。ミーゼス・ハイエクvs社会主義理論家達との論争を明らかにする。オーストリア学派の自由主義経済思想を理解するための必読書。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393611197.html
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●『女性のためのアーユルヴェーダ〈新装版〉』
クリシュナ・ウパディヤヤ・カリンジェ 著
四六判/208頁/2,420円
在日のインド人アーユルヴェーダ医が日本女性の健康の悩みに応えた待望の書。冷え性,肩こり,生理不順,排尿障害,偏頭痛,肌荒れ,肥満,低血圧,貧血,骨粗しょう症等。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393714188.html
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●『[春秋社音楽学叢書]新しい音楽が息づくとき――一〇〇年前の日本のざわめきを読む』
井手口 彰典、山本 美紀 編著
四六判/274頁/3,080円
西洋の模倣を脱し、バイタリティにあふれていた1920~30年代日本の音楽実践を、種々の事例から検証。受容から創造へと至る多様なせめぎ合いの過程を描く。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393930540.html
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♪楽譜〈新版〉♪1点
『[新版] リスト ピアノ作品集[2]――愛の夢 巡礼の年 他』
井口 基成 編集・校訂・運指 / 近藤 嘉宏 解説
菊倍判切付表紙/216頁(解説20頁)/3,080円
愛の夢(3つの夜想曲)/詩的で宗教的な調べ 7)葬送, 10)愛の賛歌/巡礼の年第1年「スイス」(全9曲)/巡礼の年第2年「イタリア」(「ペトラルカのソネット」「ダンテを読んで」ほか全7曲)/「ヴェネツィアとナポリ」(全3曲)/巡礼の年第3年:4)エステ荘の噴水
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393918241.html
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♪楽譜〈新装版〉♪1点
『スクリャービン全集[1]』
伊達 純、 岡田 敦子 編集・校訂
菊倍判切付表紙/128頁/2,970円
ソナタ集1:1)ヘ短調op.6/2)嬰ト短調op.19「幻想ソナタ」/3)嬰ヘ短調op.23/4)嬰ヘ長調op.30/5)op.53
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393918593.html

*今月の営業部イチオシ本*

●『ロックと悪魔』
黒木 朋興 著
四六判/308頁/2,750円
ブラック・サバス、スレイヤー、ヴェノム、メタリカ、聖飢魔II・・・・・・なぜヘヴィ・メタルではいつも「悪魔」が姿を現すのか――ヘヴィ・メタルが誕生し発展した主な地域がプロテスタント圏であることに着目し、カトリックとプロテスタントの違いという観点からキリスト教の文化的特徴について解説する。ポピュラー音楽の範疇を飛び越え、宗教史、思想、さらには政治・社会にいたる広範な視点から「ロック」を語る、前代未聞の一冊。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393932391.html

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★ 近刊案内(12月刊行予定) ★ https://www.shunjusha.co.jp/search/next.html
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●『今日は何の日? まるこの日めくり仏教小咄』
露の 団姫 著
四六判/404頁/2,420円
テレビでも活躍する落語家兼天台宗尼僧のまるこさんが1年366日(うるう日を含む)それぞれの「〇〇の日」をもとに1日1つ主に仏教に絡めたクスリとくる小咄をお届け。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393139073.html
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●『[人智学のパースペクティヴ] [1]霊界から社会へ至る道』
ルドルフ・シュタイナー 著 / 高橋 巖 訳 / 飯塚 立人 編
四六判/338頁/3,960円
シュタイナーの主要なテーマ(宇宙的霊性、キリスト衝動、ルツィフェル&アーリマン、カルマ)を題材にした講演・論考を集成。言語論やローゼンクロイツに関する論考も収録。
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●『[アジア文芸ライブラリー]美は傷』
エカ・クルニアワン 著 / 太田 りべか 訳
四六判/544頁/4,400円
ジャワの港町に生まれた娼婦デウィ・アユとその一族を襲った悲劇。植民地統治、占領、独立、政変と弾圧といった暴力の歴史を軸に、伝説と神話が渦巻く奇想天外な大河小説。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393455111.html
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●『福岡正信の百姓夜話――自然農法への道〈新装版〉』
福岡 正信 著
四六判/328頁/2,970円
人智を捨て、無為自然への回帰を標榜する福岡哲学の出発点となった名著の復刊。「無の思想」の実践として、独自の「自然農法」の可能性と進むべき道を縦横無尽に説き明かす。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393741603.html
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●『福岡正信の自然に還る〈新装版〉』
福岡 正信 著
四六判/488頁/3,960円
自然に仕え、自然と共生する「農」を考える。不耕起、無肥料、無農薬、無除草による「自然のまま」の画期的な取り組みが、昨今、深刻化する地球的規模の砂漠化を救う道となる。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393741610.html
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●『聴取の詩学――枠と出来事 庄野進音楽美学論集』
庄野 進 著
四六判/440頁/4,620円
ジョン・ケージを中心とした現代音楽批評に、生前さまざまな媒体に発表してきた論考を加え、実験音楽から音環境のデザインにいたるまで、音と環境についての思索の系譜をたどる。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393930526.html

♪『楽譜〈新装版〉』♪
計1点
・フォーレ全集[4]
美山 良夫、 藤井 一興 編集・校訂・運指
菊倍判切付表紙/128頁/3,080円
バラードop.19/ヴァルス・カプリス(全4曲)op.30、38、59、62/無言歌op.17(全3曲)/小品集op.84(全7曲)

(※刊行時期は変更となる場合がございます。)

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☆重版情報 ☆ https://www.shunjusha.co.jp/news/nc3760.html
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『静寂から音楽が生まれる』
アンドラーシュ・シフ 著 / 岡田 安樹浩 訳
四六判/424頁/3,300円
ピアニストとして、指揮者としての経験を語る、円熟した巨匠の素顔。【7刷】
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393936023.html

♪2024年12月 来日コンサート情報♪
2024年12月16日(月)
東京/東京オペラシティ コンサートホール
19:00 開演(18:30 開場)
ほか、全国での開催情報 詳細は こちら
https://www.kajimotomusic.com/concerts/sir-andras-schiff-piano-recital2024/

『VTuberの哲学』
山野 弘樹 著
四六判/306頁/2,640円
VTuberは中の人にも虚構のキャラクターにも還元されないという「非還元主義」に立ち、VTuber独自の存在様態を理論化しつつ、その魅力を実際の活動の例を多数挙げながら分析する。【4刷】
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393334058.html

【お知らせ】
一度品切になった書籍の内容をデジタル・データで保存し、注文が入ってから一冊ずつ印刷・製本する【オンデマンド版】で、 末木 文美士 著 『平安初期仏教思想の研究――安然の思想形成を中心として』をご注文いただけるようになりました!
(A5判/862頁/27,500円)
日本仏教の根幹が形成された平安初期、彗星のごとく現れた希有の「仏教哲学者」、安然の思想に焦点を当て〈日本仏教〉を考察する画期的論究。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393800010.html

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□営業部だより□
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ある夜、某動画サイトのshort動画を流し見ていたところ、「地球を救う黒いボール」という動画が表示された。なんでもアフリカの緑地化を目指すにあたり、炭や肥料、様々な種子を混ぜ込んだ「seed ball」と呼ばれるものを作り、手作業で投げ込んだり、飛行機から撒いたりしている活動が現地では活発らしい。動画の再生回数は1,000万回近くもあった。
これを見た私は内心「福岡正信氏の粘土団子だ!」と叫びたくなった。福岡氏は早くから同様の手法を用い世界各国での砂漠化防止、緑化活動に取り組まれていた(詳細は『福岡正信の〈自然〉を生きる』第二章に詳しい)案の定というか、コメント欄は同様の指摘をされている方が多く、氏の著名度の高さに改めて頭が下がる思いであった。
この度、弊社から福岡氏の著作を2点、緊急で復刊する運びとなった。『福岡正信の百姓夜話――自然農法への道』は氏が自然農法に取り組み始めた1958年にまとめられたものであり、農に関することに留まらず、生老病死など様々なテーマを扱ったエッセイの体裁を取っている。氏の思想的背景、特に自然農法を追求するに至った経緯を知るにあたってこれ以上の著作はないだろう。
また、『福岡正信の自然に還る』は1984年、これまでの経験を踏まえた上で、地球規模で進行する砂漠化を憂慮する氏の率直な思想をインタビュー形式でまとめたものであり、(やや値は張るものの)柔らかい語り口で氏のパーソナルな部分を知るにはもってこいの内容となっている。巻末の付記には1988年に受賞したマグサイサイ賞の表彰文と、それを受けた氏の謝辞も掲載しており、資料的価値もあると信ずる。

思えば私が子供の頃から環境破壊や砂漠化の危機は叫ばれ続けてきた。SDGsの達成に向けた取り組みが盛んに取り沙汰される現代においても、その根底にあるものは変わらないのではないだろうか。我々一人ひとりの持つ力は小さいものであるが、日々の生活をおくるにあたって小さな意識の変化をもたらすものとして、福岡氏の著作は今なお、そして後世に遺すべき貴重な金言に溢れている。(鼓)
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【Vol.068】 2024年 11月 1日 配信 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/8452
【Vol.067】 2024年 10月 4日 配信 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/8374
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