メールマガジン Vol.077
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春秋社 メールマガジン【Vol.077】
2025年 8月 1日配信
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猫のためのカチコチとした偽物の巻頭言
「没後○周年!」という売り文句を頻繁に目にするが、それって「いいもの」として受け取っていいのだろうか。「いやー誰々さんが死んでジャスト何年だから、大々的にいこうぜ!」なんて、よくよく考えたら不謹慎なことなのではないだろうか――そんなことを思いながら「サティ没後100周年!」と銘打った広告をたくさん作った。とはいえ、周忌というのは「故人を思い出して悼む」ためにあるものだから、むしろ人類の重要な営みのひとつなのだ。
近代音楽史に燦然と輝く〈変人〉エリック・サティ、一方の重鎮クロード・ドビュッシーとよくセットで語られる「フランスの代表的な作曲家」だ。本邦ではどちらも人気があり、どっちが好きかをめぐって「サティ派」「ドビュッシー派」なんていうグループもあるくらいだ。
ところで音楽界隈に限った話ではないが、歴史上の偉人というのはまるで戦国武将かなにかのように勝負させられることが多い。昔あるTV局のディレクターに「バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、誰が最強かって番組どうですかい?」と相談されたことがある。「そのバッハって誰だ、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハか?」とツッコんだせいで、その企画の行く末は知らぬものとなったが、一般論で言えばそうした”殴り合い”もまた、多くの人々が興味津々になるテーマなのだろう。
つまり「他人の喧嘩」というのも「没後百周年」と同じく、本来マイナスだけど、ある種の価値が生ずるものだ。「ほっとけばいいのに...」とか思ってはいけない。こうしたメモリアルや比較、探究が歴史的な大発見を呼ぶのだから。弊社新刊『サティとドビュッシー 先駆者はどちらか』(青柳いづみこ著)で、このふたりの〈奇才〉と〈天才〉の頂上決戦をぜひ目の当たりにしてもらいたい。
ちなみにここまで読んで、この捻くれた巻頭言が「ちょっとは好きだ」と思ったそこの君!......あなた、サティ派かもしれない。
(P)
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■目次■
▼webマガジン「web春秋 はるとあき」
▼「じんぶん堂」好評連載中!
▼新刊案内(7月刊行)
▼近刊案内(8月刊行予定)
▼書評・重版情報
▼営業部だより
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☆ webマガジン「web春秋 はるとあき」☆ https://haruaki.shunjusha.co.jp/
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●新連載●
○イタリア文学哲学散策――特にルネサンス文化下の著述家たち 澤井繁男 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/categories/1139
【第1回】イタロ・カルヴィーノ → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/8956
●好評連載●
○V.E.R.D.I. ヴェルディ 受容のリトグラフ 林いのり → https://haruaki.shunjusha.co.jp/categories/1118
「イタリアの大オペラ作曲家」について、国内外の批評の中での作曲家像の着色の過程や伝播のされ方から、分析を試みる。
【第2回】世界的作曲家の「国民意識」 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/9039
○鋼鉄の講義室 メタル文化学入門 齋藤 桂 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/categories/1126
様々な角度からヘヴィー・メタルとそれをとりまく文化を捉える試み。「メタル文化学入門」の開講!
【第4回】「不満の冬」の音楽II → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/9045
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★「じんぶん堂」好評連載中!★
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出版社と朝日新聞社による、“人文書の魅力を発信していくプロジェクト” 「じんぶん堂(powered by 好書好日)」では書籍紹介や読み物など、魅力的な内容をお届けしています。ぜひご覧ください。※木曜日更新(月3回)
◇7月3日 公開◇
ヨーガはどこから来て、どこへ行くのか?(前編) → https://book.asahi.com/jinbun/article/15862034
◇7月10日 公開◇
ヨーガはどこから来て、どこへ行くのか?(後編) → https://book.asahi.com/jinbun/article/15878919
健康維持のためのフィットネスとして広まっているヨガ。なんとなくインドの伝統というイメージがあるが実はそう単純なものではない。 伊藤雅之・愛知学院大学教授が 『現代ヨーガ論』執筆の経緯を語る。
書籍はこちらから → 『現代ヨーガ論』
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★新刊案内(7月刊行)★ https://www.shunjusha.co.jp/search/new.html
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●『空海と華厳思想』
竹村 牧男 著
四六判/464頁/5,280円
密教と華厳について仏身・言語観・世界観・成仏観・慈悲の観点から教理上の比較研究をした第一部と、代表作『十住心論』第九極無自性住心を逐文解説した第二部からなる大著。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393172988.html
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●『手塚治虫のオキナワ〈新装版〉』
本浜 秀彦 著
四六判/276頁/3,520円
手塚をマンガ家として〈復活〉させたもの――それはオキナワだった。戦争、基地、アメリカ……、その描写にこめたものとは。かつてない手塚論にして、出色の戦後日本考。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393342039.html
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●『トラウマから回復するセラピーヨガ――自己発見・癒し・変容のためのポリヴェーガル理論に基づく30の実践』
アリエル・シュワルツ 著 / 松本 くら 訳
A5判/272頁/3,300円
ポリヴェーガル理論、感情神経科学、トラウマ・インフォームド・ケアに基づく現代科学とヨガという伝統的叡智を融合。30の実践で心身両面からトラウマを癒すセルフケア書。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393365762.html
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●『サティとドビュッシー――先駆者はどちらか』
青柳 いづみこ 著
四六判/338頁/3,300円
フランス音楽史上、最も影響力をもち最も異彩を放つ〈奇才〉作曲家と〈天才〉作曲家の頂上決戦! 19世紀から20世紀にかけての燦然と輝くフランス近代音楽史を旅する。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393932407.html
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●『ハイドン交響曲〈新装版〉』
中野 博詞 著
四六判/296頁/4,180円
史料研究とは何か。楽譜校訂はどのようになされるのか。ハイドン研究所での校訂作業の実態をもとに、従来のハイドン研究を鳥瞰しつつ、交響曲の全貌と宗教音楽家ハイドンを論じる。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393932421.html
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●『バッハ 伝承の謎を追う〈新装版〉』
小林 義武 著
四六判/368頁/4,620円
20世紀バッハ研究の総決算。忘れられた演奏習慣、真偽不明の作品、「フーガの技法」「ロ短調ミサ曲」など数々の謎を、厳密な資料学的研究の立場から解明する。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393932438.html
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●『音楽療法の道しるべ――心とからだの不思議な関係』
佐治 順子 著
A5判/168頁/2,750円
音楽療法は心の避難所。臨床研究の第一人者による「音楽療法」実践とその科学的検証の試み。基礎・方法論から実践までをわかりやすく紹介。音楽による介護・看護の効果と意味。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393936177.html
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●『バッハ 演奏法と解釈――ピアニストのためのバッハ』
パウル・バドゥーラ=スコダ 著 / 今井 顕 監訳 / 松村 洋一郎、堀 朋平 訳
A5判/690頁/9,900円
常識や思い込みから解き放たれ、ピアノで生き生きとバッハを弾くために。原典版のまっさらな楽譜や装飾音奏法の堅苦しい規則を丁寧に解きほぐし、バッハ演奏の本質に迫る。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393938027.html
*今月の営業部イチオシ本*
●『プロパガンダ』
ジャック・エリュール 著 / 神田 順子、河越 宏一 訳 / 武田砂鉄 解説エッセイ
四六判/600頁/4,950円
警戒せよ。あなたの「態度」など、いとも簡単に操れる。
ソ連でも、中国でも、米国でも、すべて人間はプロパガンダに晒されている。20世紀の大思想家による、心理学と社会学の双方からプロパガンダを分析・考察した渾身の労作。
解説エッセイ「個人として生きるために」武田砂鉄
「ジョージ・オーウェルのどの悪夢小説よりもはるかに恐ろしい一冊」――「ロサンゼルス」紙
〈付録〉プロパガンダの効力/毛沢東のプロパガンダ
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393333914.html
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★近刊案内(2025年8月刊行予定)★ https://www.shunjusha.co.jp/search/next.html
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●『パーリ語初期韻文経典にみる 最古の仏教』
並川 孝儀 著
四六判/304頁/4,180円
初期韻文経典の説示を通して、ゴータマ・ブッダや直弟子たちの最古層の仏教を考察し、韻文経典の段階で教理化が進んでいることを明らかにした画期的書。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393113837.html
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●『人生というクソゲーを変えるための哲学と坐禅』
ネルケ 無方 著
四六判/280頁/2,420円
哲学者永井均の哲学・瞑想論と著者の四代前の師匠・内山興正の坐禅論を手がかりに、坐禅とは何か? 坐禅がどうやって人生を変えるのか? などの問題に迫る。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393134719.html
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●『ギフティッドネス――理解と支援のための基礎・基本』
リンダ・クレガー・シルバーマン 著 / 角谷 詩織、北條 礼子 訳
四六判/392頁/3,520円
ギフティッド児の特性や支援のあり方、誤解されがちな神話、2Eの理解と対応、家庭環境の影響など、広範なトピックを丁寧に掘り下げる。理解と支援の包括的解説書。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393373330.html
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●『新編 琉球の人文』
柳 宗悦 著 / 宇田 智子 解題
四六判/264頁/2,970円
柳宗悦が見出した沖縄独自の「民藝」とは。「琉球の人文」に関する論考を新たに取捨選択し編み直した、沖縄の新たな魅力を伝える一冊。宇田智子(エッセイスト)の解題付。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393424643.html
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●『土壌の神秘――ガイアを癒す人びと〈新装版〉』
ピーター・トムプキンズ、クリストファー・バード 著 / 新井 昭廣 訳
四六判/704頁/7,700円
汚染され荒廃した大地や森林を救うべく、シュタイナーの生命力学農法を中心にオルタナティヴな農法や生態学的研究に取り組む人たちを訪ね歩いた渾身のドキュメンタリー。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393741627.html
(※刊行時期は変更となる場合がございます。)
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☆書評・重版情報☆ https://www.shunjusha.co.jp/news/
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○読売新聞朝刊7/6にて『フォルモサ南方奇譚』が紹介されました https://www.shunjusha.co.jp/news/n61525.html
2025年7月6日の「本よみうり堂」にて、 倉本 知明 著『フォルモサ南方奇譚』の書評が掲載されました。
評者は、歴史学者/東京大学准教授の岡美穂子氏です。
「本書は、歴史と記憶、虚構と現実、そして現代と過去が複雑に交錯する、重層的な世界観で構成される。ノンフィクションだが、幻想的に小説のような語りも随所に入り、独自の文学的魅力を放つ。」
♪重版情報♪ https://www.shunjusha.co.jp/news/nc3760.html
●『摩多羅神――我らいかなる縁ありて』
山本 ひろ子 著
A5判/2022年8月刊/3,850円【3刷】
日本古来の神でもなく、経典に記された仏菩薩でもない謎の神。
あまりに強い霊力ゆえか、阿弥陀仏の背面や堂内の隅に秘密裏に祀られ、天魔・天狗のたぐいから行者を守ったという〈闇〉の異神に光を当て、その由緒と霊性のありかを探り、あわせて中世より脈々と受け継がれた日本の精神性を展望する、渾身の画期的論考。〔口絵4〕
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□営業部だより□
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1932年の7月31日、ドイツの国会選挙で、アドルフ・ヒトラー率いる国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)が40%近い票を得て、第一党に躍り出ました。この時すでに党内でフューラー(指導者、総統)と呼ばれていたヒトラーは、巧みに仕立て上げられた弁舌により政権を奪取、支配を確立していきました。
当時の劇的なカリスマ性が良く取り上げられるヒトラーですが、その後ドイツ国民が1945年の第二次世界大戦終結までたどった道を振り返ると、いかに聞き覚えの良い言葉に民衆は扇動され易いか、を痛感させられます。また、いやでも先に日本で行われたばかりの参議院議員選挙のことも、想起してしまいます。投票日前の演説で、人々の興味関心を引きつけるためにあげつらいやすいトピックを周到に選び、それらを声高に叫んで危機感をあおる候補者たち......。彼ら/彼女らの言葉はプロパガンダ(政治宣伝)であり、とてもそこに政治的信条などが読み取れるものではありませんでした。
小社新刊に、『プロパガンダ』という本があります。これはフランスの社会学者・ ジャック・エリュールが1962年に書いた、心理学と社会学の双方からプロパガンダを分析・考察した労作です。どのように/どのような個人が国家や体制に奉仕していくのかをわかりやすく解説した、社会学研究の草分け的存在でもある本書は、フリーライター・武田砂鉄氏の解説エッセイ「個人として生きるために」も収録しています。この機会にぜひ、お手に取ってみてください。 (E)
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■バックナンバー
【Vol.076】 2025年 7月 4日 配信 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/9133
【Vol.075】 2025年 6月 6日 配信 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/9132
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