メールマガジン Vol.039
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春秋社 メールマガジン【Vol.039】
2022年 5月 31日配信
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巻頭言!
魔法少女! いまやポップカルチャーに定着して、魔法少女が登場するアニメ・マンガは世にあふれていますけれど、考えてみればふしぎな存在です。聖書では「魔法使の女は、これを生かしておいてはならない」(出エジプト記22:17)といわれ、邪悪な存在として魔女狩りなどもあった魔女が、東洋の島国でいつしかこんな可愛い存在になったかと思うと感無量であります。(余談ですが、現代のキリスト教でも『カトリック教会のカテキズム』などでは、妖術を使うことは、たとえ病気を治すためであっても罪、とされていて、魔法や魔女の呪われた側面を現代に蘇らせた「魔法少女まどか☆マギカ」は、やはり傑作だなあ、と思うしだいです。)
そして、魔法少女といえば変身です。でも実は、普通の変身ではないんです。そもそも変身といえば仮面ライダーやウルトラマンですが、彼らは姿かたちがすっかり変わってしまうじゃないですか。魔法少女はそうではない。衣装や髪型が変わったり、ちょっと大人びたり、小道具を持ったりするけれど、基本的に元の姿とおんなじです。もちろん変身するとパワーアップしたり特別な力が使えるようになったりするけれど、むしろ衣装替えやお色直しに近いものなんですね。
魔法少女がどのように登場し、変身がどういう経緯で現在のようなスタイルになったのか、それを分析するのが、宗教学者・石井研士先生の『魔法少女はなぜ変身するのか――ポップカルチャーのなかの宗教』です。アニメ・マンガ・ラノベといった日本のポップカルチャーのなかに現れる宗教表象とその変容から、現在日本人の宗教性をさぐる試みで、魔法少女だけではなくて、巫女、異世界、転生といった、アニメやマンガでおなじみになった宗教に由来する概念や表象・象徴が具体例とともに分析されるのですが、いや、マンガやアニメやラノベには本当にさまざまな宗教的要素が出てくるんだなあ、と、改めてびっくりすること請けあいです。
一方で、そうしたアニメやマンガで宗教の教理に踏みこむものは多くなく、だからストーリーの都合に合わせて、宗教的要素をパッチワークしているだけのご都合主義じゃないかという印象を受ける人もいるかもしれません。でも、それはちょっと違うと思うんです。
以前ツイッターにクリスチャンだけど輪廻転生を信じる人がいました。正統な(?)キリスト教には復活はあっても輪廻はありませんから、他のクリスチャンやキリスト教に詳しい人からずいぶん叩かれていました。しかし、私にはその人の気持ちがよくわかったんです。いまの自分じゃない自分になってもう一度人生をやりなおしたい、そんな願望を熱烈に持つことはある。その人の具体的な問題を言う必要はないと思うのですが、その人にはそう願うだけの理由があった。それが自分の信仰と一致しないとき、その人はあえて自分なりのキリスト教を生みだそうとしたんですね。
アニメやマンガについても、ストーリーのためにさまざまな宗教的要素を組みあわせていくのは、ご都合主義のようでいて、その奥に隠れた、まだ明確なかたちにならない宗教的な胎動に一応の姿を与えていく作業だと思うのです。宗教的要素をどのように組みあわせていくかのなかに、現代人の宗教性のかたちが見えてくる。『魔法少女はなぜ変身するのか』は、ちょっと軽いタイトルとは裏腹に、そんなことを考えさせてくれる奥深い1冊です。ご注目いただければ嬉しいです。(K2)
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■目次■
▼webマガジン「web春秋 はるとあき」
▼「じんぶん堂」好評連載中!
▼新刊案内(5月刊行)
▼近刊案内(6月刊行予定)
▼イチオシ重版情報
▼ネット決済はじめました!
▼編集後記
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☆webマガジン「web春秋 はるとあき」☆ https://haruaki.shunjusha.co.jp
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●読み切り●
〇「映画『籠城』の音たち──制作の場から考える」
本郷から駒場へ移転した後の旧制第一高等学校をテーマにした映画『籠城』の「音」をめぐって幾層にも紡がれた思考と言葉と実践。 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/5799
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○好評連載○
〇「アルス・ピヤニカ――鍵盤ハーモニカの楽堂」 南川朱生(ピアノニマス)
SNSやメディアで注目のプロ鍵盤ハーモニカ奏者が、長年蓄積した研究の集大成を紹介。
【第5回】鍵盤ハーモニカの運び屋 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/5818
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★「じんぶん堂」好評連載中!★
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出版社と朝日新聞社による、“人文書の魅力を発信していくプロジェクト”「じんぶん堂(powered by 好書好日)」では、著者みずから語る刊行書籍紹介や読み物など、魅力的な内容を毎週お届けしています。ぜひご覧ください! ※毎週木曜日更新
◇5月19日 公開◇
まずは生物学や臨床医学からとらえた「死」の現実を――宗教なき時代に「死」を見つめて(前編)→
https://book.asahi.com/jinbun/article/14606921
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◇5月26日 公開◇
当事者としての「私の死」を現代哲学の視座で探究すると――宗教なき時代に「死」を見つめて(後編)→
https://book.asahi.com/jinbun/article/14606938
→ 書籍はこちらから『死――生命はなぜ死を受け入れたのか、また、私は死ねばただ無になるのか』https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393323984.html
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☆新刊案内(5月刊行)☆
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●1人称単数の哲学 ――ソクラテスのように考える
八木 雄二 著
四六判/240頁/3,080円
具体的な場面において個々の主体性を問うソクラテスの「徳」。人称や格変化を分析して言語に表出する理性の働きを抽出、「いま・ここ・わたし」の判断と選択としての倫理を剔出。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393323991.html
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●現代解釈 明治官製唱歌読本
ことのは会 編
A5判/424頁/3,850円
明治期にたくさん創られた唱歌。その文語体にして格調高い各曲の歌詞について、古語・難解語句の解説および大意を記し、適宜註を施す。美しい日本語を後世に遺す貴重な文献。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393936078.html
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★近刊案内(6月刊行予定)★ https://www.shunjusha.co.jp/search/next.html
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『禅語を生きる』
山川 宗玄 著
四六判/260頁/2,200円
さまざまな禅語を取り上げ、豊富なエピソードを交えて豊かに解説。パンデミックの時代を超えて、人生いかに生きるかのヒントが満載の、ユニークな「禅談」。
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『道元の〈哲学〉――脱落即現成の世界』
竹村 牧男 著
四六判/320頁/3,520円
道元の生涯から、その哲学の鍵となる生死観、修証観、言語観、時間論、脱落即現成の世界と坐禅観、見性批判を丸ごと解説。あわせて鈴木大拙の道元観も論じる。
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『魔法少女はなぜ変身するのか ――ポップカルチャーのなかの宗教』
石井 研士 著
四六判/320頁/2,640円
まどか☆マギカら魔法少女の華麗な変身。ラブライブの希など頻出する巫女。アニメ・マンガに溢れる宗教表象とその変遷を丹念にたどり、現代文化と宗教性の絡みあいを解く。
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『君ならわかる哲学』
古牧 徳生 著
A5判/416頁/2,200円
確実な知識の探求だった哲学を難解晦渋にした犯人は誰か。スター哲学者はもちろん、ヘレニズム哲学やスコラ哲学も丁寧に説明し、古代ギリシアから現代まで人間理性の軌跡を追体験。
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『旅路の果てに ――人生をゆさぶる〈旅〉をすること』
久保田 耕司 著
四六判/288頁/口絵32/2,420円
ガイドブックや口コミサイトで話題の場所を物見遊山するだけで「旅」と言えるのだろうか。写真家としてインドやタイを旅して回った著者が、旅の本質をめぐる思考の旅へといざなう。
(※刊行時期は変更となる場合がございます。)
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☆ イチオシ重版情報 ☆
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●沈黙――雑音まみれの世界のなかの静寂のちから
ティク・ナット・ハン 著 池田 久代 訳
四六判/216頁/2,200円
今年1月、故郷であるベトナム中部フエの寺院にてその生涯を閉じた〈行動する仏教〉の人、ティク・ナット・ハン師。師が、外部の騒音と、心中の想念や感情という雑音に苦悩のつきない現代人のために、内外の雑音を排除して、真の沈黙を手に入れ、世界の美しさに気づき、無意識の癒やしの力と創造力を得て、心の平安と喜びに到達する方法論を優しくわかりやすく語った名著。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393333839.html
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◎ ネット決済はじめました!◎
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このたび、小社ウェブサイトでのご注文にクレジットカード決済(ならびにアプリ決済)をご利用いただけるようになりました! サイト上にてご注文から決済まで完結する便利なサービスです。くわしくは「インターネットからのご注文ガイド」https://www.shunjusha.co.jp/news/n43787.html をご確認ください。
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□編集後記□
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梅雨の季節です。近年では「平年より20日早い」や「平年より10日遅い」といった表現をよく耳にし、異常気象ではないかと思う方も多いと思いますが、気象庁が公開している梅雨入り、および梅雨明けの日付(確定値)を見ると、昔からその年によってばらばらであったことがわかります。「平年」とは2020年までの過去30年の平均の日付のこと、を指すのだそうです。ここに「平均値」の数字の魔法が潜んでいます。たとえば、関東甲信の「平年」は一週間後の6月7日ごろですが、「中央値」を求めると6月3日ごろとなります。今年は梅雨前線がまだ北上していないので、どちらにせよ「平年より遅い」梅雨入りとなりそうです。
さて、「梅雨」と書いて「つゆ」と読ませる由来には諸説ありますが、「栗花落」と書いて「つゆり」と読ませる名字があることはご存じでしょうか。劇場版アニメーションが異例のヒットを記録した漫画『鬼滅の刃』に登場するキャラクターの“実在する名字”として近年、注目を集めました。
「栗の花」は尾のようにふさふさした白い花穂が特徴です。この雄花が落ち、受粉後、雌花は小さなイガ状になり、夏のあいだに大きくなり、少しずつ色が茶色くなるとあの「イガイガの栗」の姿になります。雄花が落ちる頃に梅雨入りすることから、「つゆり(つゆいり)」に「栗花落」の字があてられたと言われています。植物も動物も、驚くほど自然に“敏感に”、自然のなかを生きているのだということをあらためて思い知らされます。
人は“暦”をつくりだしたことで、「いつ」という日付にとらわれがちです。梅雨入りと前後して「端午の節句」「母の日」「父の日」「七夕」といった行事が続きます。こうした年中行事と日本人との向き合い方については、石井研士 著『日本人の一年と一生――変わりゆく日本人の心性〈改訂新版〉』をぜひご覧ください。
気温が変化し、湿度も上昇する季節の変わり目、みなさまくれぐれもお体に気をつけてお過ごしください。(A)
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■バックナンバー
【Vol.037】https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/5783(2022年4月1日 配信)
【Vol.038】https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/5854(2022年5月2日 配信)
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