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メールマガジン Vol.040

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 春秋社 メールマガジン【Vol.040】
     2022年 7月 1日配信
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 巻頭言!
 一生のうちで、哲学に興味を持つ人は多いと思うのですが、結局何が何だかわからず、そのうち興味をなくしてしまうという人も多いと思うんです。それもそのはず、そもそも「哲学とは何か」というのからして難問で、何をテーマにしているのか、なぜそんなことを議論するのか、さっぱりわからない。3世紀はじめのディオゲネス・ラエルティオスは、哲学には3種類あると言っていて、それは自然学と倫理学と論理学なのだけれど、現代では、自然について論じるなら物理学も生物学もあるし、論理学は数理論理学や公理的集合論の発展で、いまや数学の一部のようなものだし、倫理学は、まあ、いまでも重要だけれども、人の心を論じるなら心理学、社会を論じるなら社会学や経済学や政治学だってある。おまけに「物理学の哲学」とか「数学の哲学」なんてものもあるから、よけいわけがわからない。
 だから、哲学について知りたいなら、「哲学とは何か」なんてしかつめらしく考えずに、これまで哲学と呼ばれてきたものの歴史をざっとおさらいするのが一番の早道かもしれません。ただ、そのためにぴったりの本というのがこれまた難しい。
 これは『西洋哲学史』を書いたバートランド・ラッセルが言っていることだけれども、簡潔に書きすぎると無味乾燥になるし、詳しく書けば、耐えられないほど長たらしくなるわけで、その案配をどうするか。かくいうラッセルの本だって、邦訳は、小さい活字でA5判2段組の本が全3巻、歯ごたえ十分、読みとおすのは結構骨が折れます。おまけに、何か一本筋の通った切り口がなくて、ただ思想を羅列しているだけだと、口の悪いヘーゲルが言うところの「阿呆の画廊」になってしまう。
 そんなさまざまな困難を踏まえて、今回オススメするのが、こちら! 古牧徳生先生の『君ならわかる哲学』です。2000年以上の歴史を持つ西洋哲学をざっくり理解するのに最適な本だと自信を持っていえるのです。哲学とは「絶対に確実な知識を求めての人類の悪戦苦闘」という視点をはっきり出して、各哲学者の思想も凄く割り切って、核心部分を巧みに紹介しています。
 とにかく全体をざっくり理解することが大切で、どんな哲学もその前の時代の哲学を前提にしたり、同時代の他の哲学を参照したりしているから、全体を漠然とでも知っていると、なぜそんな議論が出てきたか理解しやすくなるし、土地勘みたいなものがついて、議論の展開がわかりやすくもなるのです。
 この本のもうひとつの特徴はその文体で、著者のいうところの言文一致体。もともとは看護や福祉といった勉強をするために大学にやってきた人々に、長年、哲学という観念的な代物を、少しでも具体的に生々しくして伝えようとしてきた経験の結晶体ですから、興味を持ってもらうためのツカミも、すらすら読んでもらうためのくふうも十分です。
 ともあれ、構想40年、執筆1年。著者は「とにかく一気に読み通してほしい」と言っていますが、読みやすくて、しかも便利な本ですから、手もとにおいてざっと読めば、哲学がずっと身近になるし、その先さらに哲学を学んでみたくなる、そんな1冊なのであります。(K2)
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■目次■
▼webマガジン「web春秋 はるとあき」
▼「じんぶん堂」好評連載中!
▼新刊案内(6月刊行)
▼近刊案内(7月刊行予定)
▼イチオシ重版情報
▼ネット決済はじめました!
▼編集後記

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☆webマガジン「web春秋 はるとあき」☆  https://haruaki.shunjusha.co.jp
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☆単行本になりました☆
〇「鳥の歌、テクストの森」 高山 花子(※「高」は、正式にははしごだかの字)
テクストの森の中で鳥の声に耳を澄ます。
(7月近刊)『鳥の歌、テクストの森』→ https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393441695.html
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○好評連載○
○「名なしのカメはAIの舞に興味がない」 田中 真知
ひょんなことから団地の一室でカメの世話をすることになった男と、AIの舞の共同生活。
【第10回】舞衣と芽衣の物語 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/5899


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★「じんぶん堂」好評連載中!★
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出版社と朝日新聞社による、“人文書の魅力を発信していくプロジェクト”「じんぶん堂(powered by 好書好日)」では、著者みずから語る刊行書籍紹介や読み物など、魅力的な内容を毎週お届けしています。ぜひご覧ください! ※毎週木曜日更新

◇6月23日 公開◇
「日常でのちょっとした害になる体験の、思わぬ影響。子育て、そしてすべての人間関係に通じる大切なこととは」→ https://book.asahi.com/jinbun/article/14649015
○書籍はこちらから『こどものスモールトラウマのためにできること――内面で何が起きているのか』
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393365656.html
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◇6月30日 公開◇
「『作者の気持ち』を忖度しすぎてしまう“病気”?――あらゆる創作物に作り手の影を追ってしまう『ベートーヴェン症候群』とは」→ https://book.asahi.com/jinbun/article/14652869
○書籍はこちらから『ベートーヴェン症候群――音楽を自伝として聴く』
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393932223.html

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☆新刊案内(6月刊行)☆
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●道元の〈哲学〉――脱落即現成の世界
竹村 牧男 著
四六判/320頁/3,520円
道元の生涯から、その哲学の鍵となる生死観、修証観、言語観、時間論、脱落即現成の世界と坐禅観、見性批判を丸ごと解説。あわせて鈴木大拙の道元観も論じる。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393152324.html
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●君ならわかる哲学
古牧 徳生 著
A5判/416頁/2,200円
確実な知識の探求だった哲学を難解晦渋にした犯人は誰か。スター哲学者はもちろん、ヘレニズム哲学やスコラ哲学も丁寧に説明し、古代ギリシアから現代まで人間理性の軌跡を追体験。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393323946.html
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●旅路の果てに ――人生をゆさぶる〈旅〉をすること
久保田 耕司 著
四六判/288頁/2,420円
ガイドブックや口コミサイトで話題の場所を物見遊山するだけで「旅」と言えるのだろうか。写真家としてインドやタイを旅して回った著者が、旅の本質をめぐる思考の旅へといざなう。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393495391.html
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*今月の営業部イチオシ本*
●魔法少女はなぜ変身するのか ――ポップカルチャーのなかの宗教
石井 研士 著
四六判/320頁/2,640円
魔法に、巫女に、異世界転生!
まどか☆マギカら魔法少女の華麗な変身。ラブライブの希など頻出する巫女。アニメ・マンガに溢れる宗教表象の由来とその変遷を、おびただしい作品から抽出し、現代文化と宗教性の絡みあいを解く。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393291627.html

 

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★近刊案内(7月刊行予定)★  https://www.shunjusha.co.jp/search/next.html
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『仏のなりかた ――上座部、説一切有部、唯識派による古典的成仏論』
大竹 晋 著
A5判/384頁/3,850円
代表的な三つの派の成仏論を、修行の階位や直観される真理、それによって断たれる煩悩、仏身・仏国土などの九つの観点から原典をあげて比較し論じた意欲作。
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『禅語を生きる』
山川 宗玄 著
四六判/260頁/2,200円
さまざまな禅語を取り上げ、豊富なエピソードを交えて豊かに解説。パンデミックの時代を超えて、人生いかに生きるかのヒントが満載の、ユニークな「禅談」。
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『摩多羅神 ――われらいかなる縁ありて』
山本 ひろ子 著
A5判/416頁/3,850円
ドラスティックな日本中世、大寺の奥深く〈闇〉に鎮座する異神に光を当て、その霊性のありかを探り、あわせて日本的精神性を展望する画期的論考。
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『子どものためのポリヴェーガル理論 ――発達障害からニューロダイバーシティの時代へ』
モナ・デラフーク 著   花丘 ちぐさ 訳
A5判/388頁/2,640円
ありのままを癒し育む。発達のちがいや自閉症スペクトラム、トラウマをもつ子どもたちの“問題行動”を神経多様性からとらえ直し社会情動的発達を促す革命的アプローチ!
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『コア・トランスフォーメーション ――癒しと自己変革のための10のステップ〈新装版〉』
コニリー・アンドレアス / タマラ・アンドレアス 著   穂積 由利子 訳
四六判/432頁/3,740円
問題や限界にこそ自己変革の鍵がある! 自身の弱みを通してコア・セルフ(根源的自己)に到達するための、NLP(神経言語プログラミング)に基づく画期的な変容のプロセス。
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『鳥の歌、テクストの森』
高山 花子 著 (※「高」は、正式にははしごだかの字)
四六判/224頁/2,200円
鳥たちの歌や声がどのように作家たちに聞かれ、追求されてきたのか――大江、石牟礼、鏡花、武満、メシアンらのテクストの森の中で、鳥の声に耳を澄ますように紐解く。
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『とりどりの肖像』
佐々木 健一 著
四六判/272頁/2,420円
音楽学者・礒山雅、極限微生物学者・掘越弘毅、コンピュータ美学の提唱者・川野洋など、かつての学友・同僚・恩師そしてごく近しい人びとまで、その横顔をかたどる15篇。
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『評伝 シャルル=ヴァランタン・アルカン ピアノの錬金術師』
ブリジット・フランソワ=サペ / フランソワ・リュグノー 著   上田 泰史 訳・解説
四六判/352頁/3,740円
超絶技巧のピアノ作品で知られる作曲家アルカン。二人の著者による、作品解説に加え挫折や隠居といった彼の人生も知る、ロマン派のピアニズムの歴史に光を当てる評伝。
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『コルトー=ティボー=カザルス・トリオ ──二十世紀の音楽遺産』
フランソワ・アンセルミニ / レミ・ジャコブ 著   桑原 威夫 訳
四六判/264頁/2,750円
20世紀を代表する一流ソリスト、コルトー、ティボー、カザルスが結成したピアノ三重奏団の伝記。音楽だけでなく、批評や興業、演奏家と戦争との関わりをも網羅する一冊。
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『音楽のある部屋 ディレッタントの流儀』
伊藤 光昌 著
四六判/320頁/2,420円
最先端の企業家にして熱烈な音楽愛好者が長年のドイツ滞在で聴いたコンサート&オペラの数々。1960年代から80年代の欧州の輝かしいクラシック・シーンを縦横無尽に語る。
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『マリス・ヤンソンス ──すべては音楽のために』
マルクス・ティール 著   小山田 豊 訳
四六判/432頁/3,630円
精緻な音楽づくりと温かい人柄で愛された巨匠の生涯。カラヤン、ムラヴィンスキーという東西の両巨匠に見出され、バイエルン放送響の首席指揮者として世を去るまでの軌跡。

(※刊行時期は変更となる場合がございます。)

 

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◎ ネット決済はじめました!◎
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 このたび、小社ウェブサイトでのご注文にクレジットカード決済(ならびにアプリ決済)をご利用いただけるようになりました! サイト上にてご注文から決済まで完結する便利なサービスです。くわしくは「インターネットからのご注文ガイド」https://www.shunjusha.co.jp/news/n43787.html をご確認ください。

 

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□編集後記□
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 前号にて梅雨前線が北上していないので「平年より遅い」梅雨入りになるのではないかとお話ししたのですが、なんと今週、関東甲信は平年より“22日早い”梅雨明けとなりました。お住まいの地域によっては雨が降った記憶がほとんどない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。この空梅雨は深刻な水不足につながる可能性も高く、猛暑に電力不足など、非常に課題の多い夏のはじまりとなりました。
 さて昨日6月30日は半年間の穢れを祓い、無病息災を祈る「夏越(なごし)の祓」でした。お近くの神社で大きな茅の輪をくぐり厄除けされた方も多いかもしれません。神社にゆく機会がなかなかない、という方には、春日大社元宮司 葉室頼昭『CDブック 大祓 知恵のことば』をぜひお手にとっていただきたい! 春日若宮御出現一千年祭における「大祓奏上」のライブを収録した、いつでも一緒に奏上することができる一冊です。新型コロナウイルスの感染拡大により外出することが躊躇われる日々が長く続いていますが、この時代だからこそ、こうした古来より続く神事を大切にしていきたいと改めて強く思います。
 最後になりましたが、今号より、配信日を月末から月はじめに変更いたしました。なにとぞご了承くださいますようお願いいたします。暑い日々が続いております。みなさまくれぐれもお体に気をつけてお過ごしください。(A)

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□春秋社 メールマガジン□ 毎月1回(月はじめ)配信

発行:株式会社 春秋社
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■バックナンバー
【Vol.038】https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/5854(2022年5月2日 配信)
【Vol.039】https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/5937(2022年5月31日 配信)
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