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メールマガジン Vol.047

※HTML版はこちらをご覧ください。

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 春秋社 メールマガジン【Vol.047】
    2023年 2月 1日配信
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 巻頭言!
 1月31日に生まれた偉人は誰でしょう? それは歌曲で有名なドイツの作曲家フランツ・シューベルト。でも、もうひとりいるのです。それは科学の詩人・佐治晴夫先生。先生の米寿記念レクチュア&コンサートが1月29日に神奈川県民ホールで開かれるというので、私、行ってまいりました。
 コンサート冒頭、先生が弾かれたのは、バッハの平均律第1番のプレリュード。一見単純なアルペジオの連なりのなかに、数学的な均整美が現れる。「言葉の通じぬ宇宙人でも、バッハの曲を聴けば、知的生命の存在を感じるのではないか」――そんな思いで、先生がNASAの惑星探査船ボイジャーのゴールデンレコードに、バッハの曲を収録させた逸話は有名です。でも同時にそれは、戦時中、日本橋三越のパイプオルガンの荘厳な音色で聴いたバッハでもあるのです。
 米軍のB-25による最初の東京空襲に遭遇した記憶。パイロットの顔すら見える至近距離で、機銃掃射が目の前に土煙と水煙を平行に走らせていくなか、命からがら逃げ惑った記憶。そのとき東京がやがて灰燼に帰すことを悟った父親が、「いまのうちに三越でパイプオルガンを聴いておけ」と勧めたというのです。
 あるいは、まだ物心もつかないころ、お手伝いさんが歌ってくれたシューベルトの子守歌。あるいは、国民学校の教科書に載っていた「月光の曲」の物語。月夜に散策していたベートーヴェンが、ふと耳にしたピアノの音をたどっていくと、ピアノを弾いていたのはひとりの盲目の少女であった。子ども心にこの話に感動した佐治先生が、いま月光の曲を弾く。
 ですから佐治先生の音楽は、佐治先生の記憶と深く結びついているのです。戦争が徐々に泥沼化し、鉄を供出して蓄音機の針がなくなると竹の針で聴き、竹槍をつくるために竹がなくなると今度は葉書をくわえ、回転するレコードの溝に葉書の角をあてがって、骨伝導で聴いたパデレフスキのピアノ。渇いた鹿が谷川の水を求めるように、戦争の暗い世相のなかで音楽に希望を求めつづけた記憶が、いま先生に音楽を奏でさせるのです。
 『荘子』の「胡蝶の夢」の逸話に想を得て、みずから編曲した童謡「喋々」の変奏曲。佐治先生の世界は、音楽からご専門の物理学や数学へ、そこからさらに神話や宗教へと曼荼羅のようにひろがります。そんな先生の世界を、先生のお書きになった書物でも存分に堪能していただきたい。弊社は、物理学から数学、相対性理論や量子論、さらに般若心経や星座のお話までちりばめられた、楽しく読めて、ためになる佐治先生の本をたくさん取り揃えております。ぜひお読みいただきたいと思います。(https://www.shunjusha.co.jp/search/s18390.html)
 さて、佐治先生がパイプオルガンで、カッチーニとグノーの2つのアヴェ・マリアを演奏され、淮南子や聖書にも触れながら「時間」のお話をされて、レクチュア&コンサートがいったん終わります。すると、あでやかなドレス姿で、先生のご令嬢、ピアニストの亜矢子さんが入場されました。リストがピアノ用に編曲したシューマンの歌曲「献呈(Widmung)」です。実に華やかな演奏で、先生の米寿のお祝いです。佐治先生の音楽への情熱は、こうして次世代へ、さらに次の世代へと受け継がれていくのでしょう。
 佐治先生! あらためて、米寿、おめでとうございます。ますますのご活躍をご祈念申しあげます。

(なお、昨年12月16日の佐治先生のレクチュア&コンサートの様子を、佐治先生と『マンガで読む14歳からの現代物理学と般若心経』でタッグを組んだイラストレーターの赤池キョウコ先生が、ほのぼのマンガ・レポートにしてくださいました。ツイッターやweb春秋「はるとあき」で紹介する予定です。ご期待ください。)(K2)

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■目次■
▼webマガジン「web春秋 はるとあき」
▼「じんぶん堂」好評連載中!
▼新刊案内(1月刊行)
▼近刊案内(2月刊行予定)
▼重版情報
▼編集後記

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☆webマガジン「web春秋 はるとあき」☆ https://haruaki.shunjusha.co.jp
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○好評連載○
〇「人生というクソゲーを変えるための仏教」 ネルケ無方
人生というクソゲーを遊んで楽しい本当のゲームに変える方法を探る。
【第7回】釈尊はなぜ喋ってしまったのか? → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/6897
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○「音楽を描く言葉と身体──ふるまいのアナリーゼ」 吉川 侑輝
音楽の記述をその状況とともにとらえ直していくことにあえて愚直にこだわってみたい。
【第4回】天才と出会う――サリエーリとモーツァルトの対話 → https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/6835

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★「じんぶん堂」好評連載中!★
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出版社と朝日新聞社による、人文書の魅力を発信していくプロジェクト「じんぶん堂(powered by 好書好日)」では、著者みずから語る書籍紹介や読み物など、魅力的な内容をお届けしています。ぜひご覧ください。 ※毎週木曜日更新(月3回)

◇1月12日 公開◇
「お守りの起源とは。そこにこめられた願いから呪術と信仰の諸相をひもとく――『お守りを読む』」 →  https://book.asahi.com/jinbun/article/14790575
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◇1月19日 公開◇
「守り袋の誕生と進化にみる、「身を護る術」「心の拠りどころ」としてのお守り――『お守りを読む』」 → https://book.asahi.com/jinbun/article/14790602

→ 書籍はこちらから 『お守りを読む――日本人は何を願ってきたのか』
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393482292.html

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☆新刊案内(1月刊行)☆ https://www.shunjusha.co.jp/search/new.html
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●理想的な利他 ――仏教から考える
平岡 聡 著
四六判/264頁/2,750円
現代的価値観へのアンチテーゼとして注目された「利他」。実は仏教用語である。その言葉の由来である仏教思想から理解することで、何が利他を利他にするのかが分かる。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393134634.html
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●呼吸のくふう ――日常生活の中の禅 [創業105周年記念復刊]
辻 雙明 著
四六判/200頁/口絵2/2,200円
「結局、呼吸だ」という老師のことばを胸に坐禅の研鑽を続けた著者の〈呼吸〉の極意を語った書。あらゆる健康法の原点ともいうべき呼吸、気功や気の開発のための座右の書。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393142905.html
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●天皇と般若心経 ――空海『般若心経秘鍵』上表文を読み解く
武内 孝善 著
四六判/248頁/3,080円
疫病対策に礼拝されてきた嵯峨天皇宸筆『般若心経』から、日本におけるその受容と展開を解き明かし、あわせてそこに共通する空海の『般若心経』観についても論じる意欲作。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393172957.html
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●ゲーテ主義 ――霊学の生命の思想〔自由と愛の人智学1〕
四六判/264頁/3,080円
シュタイナー霊学の原型としてのゲーテ研究。ゲーテの考え方・生き方とシュタイナー思想はどう関わるか。ゲーテの魂を受け継ぐ精神的営為。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393325599.html
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丹治信春 監修〔現代哲学への招待〕
●穴と境界 ――存在論的研究〈増補版〉 [創業105周年記念復刊]
加地 大介 著
四六判/264頁/3,300円
我々の身近にありながら、存在と無、具象と抽象、ものとことの間でうごめく奇妙なやつらを通して存在の秘密へ誘う野心作。本書への反響や議論の発展をまとめた追記を増補。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393329078.html
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●グノーシス主義の思想 ――〈父〉というフィクション [創業105周年記念復刊]
大田 俊寛 著
四六判/288頁/3,080円
人口に膾炙した知識人らの虚妄の解釈を排し、テキストを細心に読み解くとき、〈父なる神〉の新の姿を求めて進化したグノーシス主義の発展と崩壊の軌跡が明らかになる。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393333938.html
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●オウム真理教の精神史 ――ロマン主義・全体主義・原理主義〈増補版〉 [創業105周年記念復刊]
大田 俊寛 著
四六判/320頁/2,750円
生物化学兵器テロで日本を震撼させたオウム真理教は近代の宗教・哲学・政治思想の鬼子だった! さらなる調査から判明したオウムの組織の実態と日本社会の歪みを追記。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393333945.html
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●グローバル現代の比較思想 ――実践的叡智の哲学へ
橋 ひさき 著(※ひさきは木へんに令)
A5判/312頁/4,180円
発展する自然科学や混迷する世界情勢の中で共通の立脚点や斬新な視座の獲得はいかに可能か。龍樹と論理学、西田と量子力学、禅とキリスト教などスリリングな比較から探究。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393341223.html
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●NLPヒーローズ・ジャーニー [創業105周年記念復刊]
ロバート・ディルツ/スティーヴン・ギリガン 著  橋本 敦生 監訳  浅田 仁子 訳
四六判/464頁/3,740円
コーチング界の雄とエリクソン催眠療法の第一人者が開発した伝説のワークショップを完全再現。神話学の「英雄の旅」をモチーフに、苦難を克服し、成長へ向かう4日間の旅。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393366448.html
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●想像力 ――生きる力の源をさぐる
内田 伸子 著
四六判/320頁/1,980円
見えないものを見、あすを思い描き、現実を超える力。知覚、表象の構成、想起、思考、推理…ヒトの認識の背後で働く驚くべき能力のメカニズムを発達心理学の見地から探る。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393373323.html
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●ヴァンサン・ダンディ ――〈フランス音楽〉の開拓者
アンドリュー・トムソン 著  新宅 雅幸 訳
四六判/376頁/3,850円
作曲や執筆など多方面で活躍しつつ、学校の設立にも関わりながら数多くの次世代の作曲家を育てた、フランス音楽を語る上で欠かせない作曲家ヴァンサン・ダンディの評伝。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393932254.html
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●音楽のなかの典礼 ――ベートーヴェン《ミサ・ソレムニス》はどのように聴かれたか
清水 康宏 著
四六判/308頁/3,850円
「異化された大作」(アドルノ)であり、しばしば“非典礼的な教会音楽”とされた《ミサ・ソレムニス》の受容史を通じて、音楽/芸術と宗教/教会の複雑な関係性に迫る。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393932292.html
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●アレクサンダー・テクニーク ――やりたいことを実現できる〈自分〉になる10のレッスン [創業105周年記念復刊]
小野 ひとみ 著
四六変形判/208頁/1,980円
惰性の習慣、無駄な緊張、身体不在の意識先行で本来の力を失っている現代人。今・ここにある自分への気づきを促し、自由自在な動きを取り戻す、注目の心身コントロール法。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393935262.html
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●プーランクを探して ――20世紀パリの洒脱な巨匠 [創業105周年記念復刊]
久野 麗 著
四六判/448頁/4,400円
黄金時代のパリに生きた作曲家プーランクの、軽妙洒脱かつ奥深い音楽を、彼が愛した人たちや芸術と一緒にめぐる旅の全貌。20世紀フランス音楽史に燦然と輝く本格的評伝。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393936092.html
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楽譜 ●カール・チェルニー 12の前奏曲とフーガ ――「フーガ演奏教本」作品400
菊倍判/144頁/3,630円
バッハを意識しつつロマン派の響きを加えた12組のプレリュードとフーガ。ピアノ演奏技術の最難関であるフーガ演奏技法の熟練と完成をめざす、19世紀ピアニズムの知られざる金字塔。
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393912393.html

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★近刊案内(2023年2月刊行予定)★ https://www.shunjusha.co.jp/search/next.html
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『中期密教経典と菩提心 ――『大日経』『金剛頂経』『理趣経』』
大塚 伸夫 著
A5判/512頁/6,600円
初期密教経典の内容に立ち入り、歴史的展開を追うなかで、中期密教経典への流れを描き出す。さらに中期密教経典の煩悩と菩提心の関係を示す各経典のモデルを明らかにする。
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『〈私〉の哲学 をアップデートする』
永井 均 / 入不二 基義 / 青山 拓央 / 谷口 一平 著
四六判/304頁/2,860円
『〈私〉の哲学 を哲学する』から10年以上経ち、ほぼ同じ面々が集まったワークショップの記録とそのアフターソートが〈私〉の哲学をめぐる議論をアップデートする。
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『涙の果て ――知られざる女性のハリウッド・メロドラマ』
スタンリー・カヴェル 著  中川 雄一 訳
四六判/416頁/4,840円
「私には映画が哲学のために創られたかのように見える」――『ガス燈』『情熱の航路』など古典ハリウッド映画を分析し、現代における人間を探究するカヴェル映画論の頂点。
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『生成と統合の神学 ――日本・山崎闇斎・世界思想』
久保 隆司 著
A5判/544頁/口絵1/8,800円
いまだ謎や誤解の多い江戸時代の儒学者・宗教思想家である山崎闇斎の思想を、心理学・文化人類学・現代哲学などを取り入れた学際的なアプローチで解明する。
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『共苦する人間 ――医学哲学から宗教と医学を考える』
杉岡 良彦 著
四六判/448頁/3,960円
人の死や苦に直面せねばならない医学と宗教。宗教の寿命への貢献や祈りによる苦痛軽減など様々な研究成果を踏まえ、充実した生のために対立を乗り越えて共存の道を探る。

(※刊行時期は変更となる場合がございます。)

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□編集後記□
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 年が明け早一ヶ月。みなさま日頃の疲れが溜まってきていませんか?
 小社から昨年12月に刊行した『ZEN呼吸』は健康長寿のお手本、江戸の禅僧「白隠さん」の呼吸法をメソッド化した「ZEN呼吸法」が学べる一冊です。
 10代の頃から悩まされてきた長年の不調を呼吸で克服した椎名由紀氏と、円覚寺派管長である横田南嶺老師によるこの共著は、第一章には対談を収録、第二章は写真でわかりやすく解説した実践篇、そして老師が白隠さんについて語る第三章に加え、巻末には『夜船閑話』の現代語訳も付いています!
 寒さが厳しさを増すなか、すでに花粉飛散の情報も。長いマスク生活で大きく息を吸うことが減ってきているかもしれませんが、ぜひこの機会に「呼吸」を整えて、体調を整えてみてはいかがでしょうか。みなさまのご健康を心よりお祈り申し上げます。(A)

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□春秋社 メールマガジン□ 毎月1回(月はじめ)配信

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■バックナンバー
【Vol.045】https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/6846(2022年12月5日 配信)
【Vol.046】https://haruaki.shunjusha.co.jp/posts/6948(2023年1月1日 配信)
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