最古の鍵盤ハーモニカ
前回までは、西洋フリーリード史の全体像や、鍵盤ハーモニカのルーツ楽器の一部を紹介してきました。今回はいよいよジェネリックな鍵盤ハーモニカの定義を網羅した、世界最古と思われる、誰がどこからどう見ても「ザ・鍵盤ハーモニカ」な楽器の詳細に迫ります。
生き別れの兄弟
1820年代後半はフリーリード楽器史上のエポックであり、大豊作の続いた期間でした。イギリスではチャールズ・W・ウィートストーン(Charles W. Wheatstone)がクロマティックコンサーティーナやシンフォニウム、ウィーンではシリル・デミアン(Cyrill Demian)がダイアトニックアコーディオンの特許をそれぞれ申請し、前回ご紹介した巨大蝶ネクタイ「ノイ・チャン」などもこの時期に生まれました。まさに「第二次フリーリードベビーブーム」の様相を呈していたのです。なかでも1829年は、幾つかのフリーリード楽器が相次いで発明されたキーイヤーでした。
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