蠢く鍵盤ハーモニカ
前回までの記事では、鍵盤ハーモニカの内部構造や、音が鳴る仕組みを分子レベルで探ってきました。今回からは、いよいよヨーロッパで鍵盤ハーモニカが誕生したその歴史を探るべく「世界史編」をお届けしたいと思います。
フリーリード楽器の世界史調査における3つの問題
まずは本編に進む前に、「フリーリード楽器の世界史」をとりまく状況がどのような状態なのかを整理します。ここでは大きく3つの問題を取り上げたいと思います。
1つ目の問題は、1つの楽器が生まれる過程は、一筋縄ではないということです。まず、ほぼあり得ない例としては以下の図のような生まれ方です。
このように、突然誰かの秀でた思いつきにより、1つの完成した楽器がポッと生まれることは極々稀です。1つの楽器が生まれる時、その楽器は形状を変え、はたまた作り手を変え、生まれたり、消えたり、真似したり、真似されたり、盗まれたり、改良されたり、変異したりして、きわめて複雑な進化が起こっています。また、この進化は離れた場所で同時多発的に発生、進行することも珍しくないのです。
(続きは書籍でお楽しみください)