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希望のディアスポラ――移民・難民をめぐる政治史 早尾貴紀

【公開終了】ディアスポラ元年としての明治維新、そして今

 はじめに

 「日本」とは何か? 「日本人」とは誰か? この大きな問いは、いろいろな意味で立てられうるし、それに対してこれが正解というものはない。強固なナショナル・アイデンティティを求めてこの問いを立て、それに満足する解答を自ら与えて誇らしげにしている者もあるが、そういう「国」や「国民」の枠組みや概念そのものを相対化するためにこの問いを立て、自らのアイデンティティを解きほぐす者もあろう。

 2018年は「明治維新150年」ということで、安倍晋三首相の年頭所感をはじめとして、新年からこれを祝福する政治家の発言が相次ぎ、この2月11日の「建国記念日」は、賛否ともに例年以上に注視された。そしてこの文章を執筆している現在、韓国での平昌オリンピックが開催中であり(2月9日~25日)、スポーツとナショナリズムが交錯するなかで、南北朝鮮の分断国家の一方での開催ということもあり、またしても「国家」のあり方への問いが浮き彫りになっている。

 さらに過日、1月末に厚生労働省が2017年統計を発表し、いわゆる外国人労働者数が過去最高の約128万人となったことがわかった。在日外国人数全体は、法務省統計によると247万人とのことである(ここには毎年約1万人前後になる日本国籍取得者、いわゆる「帰化者」は含まれていない)。もう一つ新しい法務省統計が2月13日に発表され、2017年の難民申請が約2万人に達し過去最高に達した一方で、難民認定数は前年度から減少してわずか20人にとどまった。認定率は0.1パーセントという、想像を絶する狭き門となっている。この一見すると相反する現象はいったい何を意味するのだろうか。

 明治維新、オリンピック、分断国家、外国人労働者、難民……これらをどのように関連づけて考えることができるのか、そしてそうした思考は私たちをどこへ導くのだろうか。

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著者略歴

  1. 早尾貴紀

    1973年生まれ。東京経済大学准教授。専攻は社会思想史。著書に『ユダヤとイスラエルのあいだ』(青土社)、『国ってなんだろう?』(平凡社)。共編書に『シオニズムの解剖』(人文書院)、『ディアスポラから世界を読む』(明石書店)、共訳書に『イラン・パペ、パレスチナを語る』(つげ書房新社)、サラ・ロイ『ホロコーストからガザへ』(青土社)、ジョナサン・ボヤーリン/ダニエル・ボヤーリン『ディアスポラの力』(平凡社)、イラン・パペ『パレスチナの民族浄化』(法政大学出版局)、ハミッド・ダバシ『ポスト・オリエンタリズム』(作品社)ほか。

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